空き家バンク物件取得前に確認すべき費用と補助金のチェックリスト
空き家バンクを利用した地方移住にご興味をお持ちのことと存じます。都市部とは異なるゆったりとした環境や、魅力的な価格の物件がある一方で、「実際にどれくらいの費用がかかるのだろう?」「補助金って本当に使えるの?」といった金銭的な不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、空き家バンク物件の取得を検討し始めた方が、実際に動き出す前に確認しておきたい費用と補助金に関するポイントを、チェックリスト形式で分かりやすく解説します。この記事をお読みいただくことで、費用全体像を把握し、計画的に移住準備を進めるための第一歩を踏み出すことができるでしょう。
チェックリスト1:物件取得にかかる費用(物件価格以外)の確認
空き家バンクに掲載されている物件価格は、あくまで売主へ支払う建物の代金です。これ以外にも、取得時には様々な費用が発生します。想定外の出費で慌てないよう、事前に確認しておきましょう。
- 仲介手数料: 不動産業者が仲介する場合に発生します。宅地建物取引業法により上限額が定められており、「(物件価格の4% + 2万円) + 消費税」などが目安となります。例えば、物件価格が500万円の場合、仲介手数料の上限は約23万円(税別)となります。空き家バンクによっては、自治体が運営し仲介手数料がかからない場合もありますので、物件ごとに確認が必要です。
- 登記費用: 物件の所有権を自分名義に変更するために必要な費用です。これには、「登録免許税」という税金と、司法書士に手続きを依頼する場合の「司法書士報酬」が含まれます。登録免許税は固定資産税評価額の2%程度が目安ですが、軽減措置が適用される場合もあります。司法書士報酬は依頼する事務所によって異なりますが、数万円から10万円程度を見ておくと良いでしょう。
- 固定資産税・都市計画税の精算金: その年度の固定資産税・都市計画税は、通常1月1日現在の所有者に課税されます。年の途中で売買が行われる場合、引き渡し日を境に、売主が既に納めた税金のうち買主が負担すべき分を日割りで精算するのが一般的です。
- 印紙税: 不動産売買契約書に貼付する印紙代です。契約金額に応じて税額が異なり、数千円から数万円程度かかります。
- 不動産取得税: 不動産を取得した際に一度だけかかる税金です。固定資産税評価額に基づいて計算されますが、居住用の不動産や一定の条件を満たす空き家については軽減措置が適用される場合があります。取得後数ヶ月〜半年程度で納税通知書が届くのが一般的です。
【確認ポイント】 物件価格以外にかかる諸費用は、物件価格の6%~10%程度を目安と考えておくと良いでしょう。ただし、仲介手数料の有無や、軽減措置の適用状況によって変動します。
チェックリスト2:リノベーションにかかる費用(計画段階で考えること)の確認
空き家バンクの物件は、そのまま住める状態ではないことが多く、リノベーション(改修)が必要になるケースがほとんどです。どこをどの程度直すかによって費用は大きく変わります。
- リノベーションの範囲と内容:
- 部分的な改修: 水回り(キッチン、浴室、トイレ)の交換、壁紙の張り替え、床材の変更など、特定の場所や気になる部分だけを直す場合。費用は内容によりますが、数十万円から数百万円程度が目安となります。
- 骨組みを残して全面的改修(スケルトンリフォーム): 建物の構造体だけを残し、間取りや内装、設備をすべて新しくする場合。新築に近い状態になりますが、費用も大きくなり、数百万円から1千万円以上かかることもあります。
- 耐震改修、断熱改修: 築年数の古い物件の場合、安全性や快適性を高めるためにこれらの工事が必要になることがあります。別途費用がかかりますが、後述の補助金対象となることが多い工事です。
- 建物の状態: 同じ築年数でも、手入れの状況や使われていた期間によって建物の状態は大きく異なります。シロアリ被害、雨漏り、基礎のひび割れなどがある場合、想定外の修繕費用が発生する可能性があります。可能であれば、契約前に「建物状況調査(インスペクション)」を行うことを検討しましょう。専門家(建築士など)に建物の状態を詳しく見てもらうことで、必要なリノベーション内容や費用をより正確に把握できます。費用は数万円から10万円程度が目安です。
【確認ポイント】 理想の暮らしを実現するために、どの程度の改修が必要か、建物の状態はどうかを事前に確認し、リノベーション費用の概算を立てることが重要です。複数の工務店やリフォーム会社から見積もりを取ることも有効です。リノベーション費用は、物件価格と同等、あるいはそれ以上にかかることも少なくありません。
チェックリスト3:その他の初期費用の確認
物件取得やリノベーション費用以外にも、移住・入居までには様々な費用が発生します。
- 引越し費用: 現在の住まいから新しい住まいへの引越しにかかる費用です。荷物の量や移動距離、時期によって大きく変動します。
- 家具・家電購入費用: 現在のものが使えない場合や、新しい生活に必要な家具・家電を買い揃える費用です。
- インフラ整備費用: 電気、ガス、水道、インターネットなどの契約手続きや、場合によっては引き込み工事が必要になる費用です。プロパンガスの場合、保証金が必要なケースもあります。
- 火災保険・地震保険料: 万が一の災害に備える保険料です。ローンの利用には加入が必須となることが一般的です。
- 当面の生活費: 移住直後は何かと物入りになるため、数ヶ月分の生活費に加えて、予備費として一定の資金を準備しておくと安心です。
【確認ポイント】 これらの費用は、ご自身の状況によって大きく異なりますが、見落としがちな項目です。リストアップして概算を立てておきましょう。
チェックリスト4:利用できる可能性のある補助金制度の確認
空き家バンク物件の取得や改修、移住に対して、国や自治体が様々な補助金制度を設けています。これらの制度を賢く活用することで、費用負担を大きく軽減できる可能性があります。取得前にどのような補助金があるか、自分が対象になりそうかを確認しておくことが重要です。
- 国の補助金:
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業: 既存住宅の性能向上リフォーム(耐震、断熱、劣化対策など)に対して補助が出ます。一定の要件を満たす必要があります。
- 地域型住宅グリーン化事業: 中小工務店などが連携して、省エネルギー性能や耐久性などに優れた木造住宅を建てる、またはリフォームする場合に補助が出ます。空き家改修で利用できるケースもあります。
- その他、省エネ改修やバリアフリー改修に関する補助金制度があります。
- 自治体の補助金:
多くの市区町村が、独自の空き家対策や移住促進策として補助金制度を設けています。内容や名称は自治体によって様々です。
- 空き家改修費補助金: 空き家バンクに登録された物件など、特定の空き家の改修費用の一部を補助する制度です。補助率(例:費用の1/2以内)や上限額(例:100万円まで)が定められています。
- 移住促進補助金: 市町村への移住者に対して、引越し費用や家賃、場合によっては住宅購入費用の一部を補助する制度です。
- 耐震改修補助金: 旧耐震基準の建物を新耐震基準に適合させるための改修費用を補助する制度です。
- その他: 取得費用の一部補助、家財処分費用補助、賃貸する場合の改修費用補助など、多様な制度が存在します。
【確認ポイント】 利用できる補助金は、物件がある自治体、改修内容、そして申請する方の条件(年齢、家族構成、移住者であるかなど)によって決まります。重要なのは、ほとんどの補助金は工事契約前や取得前に申請が必要であるということです。必ず自治体の公式サイトや空き家バンク担当窓口で最新の正確な情報を入手し、申請時期や条件を確認してください。
チェックリスト5:費用全体像の把握と資金計画の確認ポイント
これまでに確認した様々な費用と、利用できる可能性のある補助金を考慮に入れて、全体の資金計画を立てましょう。
- 総費用の概算: 物件価格 + 取得諸費用 + リノベーション費用 + その他初期費用 = 総費用 (例:物件価格500万円 + 取得諸費用50万円 + リノベ費用800万円 + その他初期費用50万円 = 合計1,400万円) ※これはあくまで一例です。物件や改修内容によって大きく変動します。
- 自己資金と借入のバランス: 総費用に対して、自己資金をどれだけ充てられるか、不足分をどのように借入で賄うかを検討します。住宅ローンは、物件の担保評価やリノベーション費用も含められるかなど、金融機関によって条件が異なります。空き家であることや、築年数が古いことで利用できるローンが限られる場合もありますので、事前に複数の金融機関に相談してみることをお勧めします。
- 補助金の組み込み: 利用できる補助金があれば、総費用から差し引いて考えられます。ただし、補助金は後払いである場合が多いため、一時的な資金計画も必要です。
- 予備費の確保: 築年数の古い空き家の場合、工事を進める中で予期せぬ劣化箇所が見つかるなど、計画以上の費用がかかる可能性もゼロではありません。総費用の1割~2割程度を目安に、予備費を確保しておくと安心です。
【確認ポイント】 これまでのチェックリストで確認した項目を一つずつ洗い出し、具体的な金額を当てはめてみることで、現実的な資金計画が見えてきます。無理のない計画を立てることが、安心した移住生活を送るための鍵となります。
まとめ:計画的な準備で不安を解消し、空き家バンク移住へ
空き家バンクを利用した移住は、費用面でのメリットや、地域との繋がり、理想の暮らしの実現など、多くの魅力があります。一方で、費用や手続きに関する不安があるのも当然のことです。
この記事でご紹介したチェックリストを活用し、物件取得にかかる費用、リノベーション費用、その他の初期費用、そして何より重要な補助金制度について、事前にしっかりと情報収集し、計画を立てることで、多くの不安は解消されるはずです。
補助金制度は日々変わる可能性があるため、必ず最新の情報をご自身で確認することを忘れないでください。自治体の担当窓口や、空き家バンクの運営者、移住相談窓口などを積極的に活用することも、情報を得る上で大変有効です。
計画的に準備を進め、理想の空き家との出会いを実現してください。応援しています。