空き家バンク築古物件のリノベーション費用、これだけは知っておきたい必須改修と費用目安、活用できる補助金
空き家バンク築古物件のリノベーション費用、これだけは知っておきたい必須改修と費用目安、活用できる補助金
都市部から地方への移住を検討される際、選択肢の一つとして「空き家バンク」に登録された物件に魅力を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。比較的安価に物件を取得できる可能性がある一方で、「築年数が古い物件のリノベーションにいくらかかるのか分からない」「思わぬ費用が発生するのではないか」といった費用面での不安を抱えている方も少なくありません。
この記事では、空き家バンクで築古物件を取得し、ご自身の理想の住まいへとリノベーションするために必要となる費用について、特に知っておきたい「必須改修」に焦点を当てて詳しく解説します。さらに、これらの費用を軽減するために利用できる可能性のある補助金制度についてもご紹介します。この記事を通して、費用への漠然とした不安を解消し、具体的な移住・住まいづくりの計画を立てる一助となれば幸いです。
空き家取得にかかる費用
まず、空き家バンクを通じて物件を取得する際にかかる費用について確認しましょう。物件そのものの価格以外にも、様々な費用が発生します。
- 仲介手数料: 不動産業者を介して取引する場合に発生します。宅地建物取引業法により上限が定められており、物件価格によって計算方法が異なりますが、物件価格の3%+6万円(税別)が目安となることが多いです。
- 登記費用: 物件の所有権を移転するための登記にかかる費用です。登録免許税(固定資産税評価額の2%など)と、司法書士に依頼する場合の報酬が含まれます。
- 不動産取得税: 不動産を取得した際に一度だけかかる税金です。固定資産税評価額に基づいて計算されます。
- 固定資産税・都市計画税: 物件を所有している限り毎年かかる税金です。取得した年は日割りで清算することが一般的です。
- 契約書印紙税: 不動産売買契約書に貼付する印紙代です。契約金額によって税額が決まります。
- その他: 物件によっては、測量が必要な場合の費用や、境界確定費用などが発生する可能性もあります。
これらの諸費用は、物件価格の6%~10%程度を目安として考えておくと良いでしょう。ただし、物件の状況や条件によって大きく変動するため、事前にしっかりと確認することが重要です。
築古物件のリノベーションにかかる費用
空き家バンクの築古物件を取得した場合、快適かつ安全に暮らすためにはリノベーションが必要となるケースがほとんどです。特に築年数が古い物件では、デザインの変更だけでなく、住まいの基本的な性能に関わる「必須改修」が必要になることが多いです。ここでは、築古物件で特に対象となりやすい改修項目と、その費用目安について解説します。
リノベーション費用は、工事内容、建物の構造や状態、使用する建材や設備機器のグレード、依頼する工務店などによって大きく変動します。ここで示す費用はあくまで一般的な目安として参考にしてください。
築古物件で特に対象となりやすい必須改修項目
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耐震補強 地震が多い日本では、古い建物の場合、現行の耐震基準を満たしていないことがあります。安心して暮らすためには、耐震診断を行い、必要に応じて壁の補強や基礎の補修などの耐震補強工事を行うことが非常に重要です。
- 費用目安: 50万円 ~ 200万円以上(建物の規模や劣化状況による)
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断熱改修 古い建物は断熱性能が低いことが多く、冬は寒く夏は暑いといった問題が発生しやすいです。壁、床、天井に断熱材を入れたり、窓を断熱性の高いもの(二重窓やペアガラスなど)に交換したりすることで、快適性が向上し、光熱費の削減にも繋がります。
- 費用目安: 部分的な工事で数十万円、建物全体で100万円 ~ 300万円以上(工事範囲や方法による)
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水回り設備交換(キッチン、浴室、トイレなど) 水回り設備は使用頻度が高く、経年劣化しやすい部分です。給排水管も老朽化している場合があります。設備の交換や、配管の更新が必要になることが多いです。
- 費用目安:
- キッチン交換: 50万円 ~ 150万円以上
- 浴室交換(ユニットバス化含む): 80万円 ~ 150万円以上
- トイレ交換: 20万円 ~ 50万円以上
- 給排水管更新: 数十万円 ~ 100万円以上(配管の長さや状況による)
- 費用目安:
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屋根・外壁の補修・改修 屋根や外壁は雨風から建物を守る重要な部分です。ひび割れ、雨漏り、塗装の劣化などが見られる場合、補修や葺き替え、塗り替えが必要になります。建物の耐久性維持に不可欠な工事です。
- 費用目安:
- 屋根葺き替え・カバー工法: 80万円 ~ 200万円以上
- 外壁塗り替え: 50万円 ~ 150万円以上
- 外壁張り替え: 150万円 ~ 300万円以上
- 費用目安:
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給排水管・電気配線の更新 建物が古い場合、給排水管や電気配線が現在の基準や容量に合わない、あるいは劣化している可能性があります。配管の詰まりや漏水、容量不足によるブレーカー落ち、漏電などのリスクがあるため、必要に応じて更新が必要です。
- 費用目安: 数十万円 ~ 100万円以上(建物の規模や配線の状況による)
フルリノベーションの場合の費用目安
上記のような必須改修を含め、間取り変更や内装・外装の一新など、建物全体を大きく改修する「フルリノベーション」を行う場合、費用は比較的高額になります。 * 費用目安: 建物面積や工事内容にもよりますが、一般的に坪あたり20万円 ~ 50万円以上が目安とされています。例えば、30坪の家であれば600万円 ~ 1,500万円以上といったイメージです。
費用を抑えるポイント
リノベーション費用を抑えるためには、工事範囲の優先順位付け、使用する建材や設備のグレード検討、複数の工務店から相見積もりを取ることなどが有効です。また、ご自身で可能な範囲をDIYで行うことも費用削減に繋がる可能性があります。
その他の諸費用
空き家を取得・リノベーションして移住するまでには、上記以外にも様々な費用が発生する可能性があります。
- 引越し費用: 現在お住まいの場所からの距離や荷物の量によって変動します。
- 家具・家電購入費: 新居に合わせて買い替えや追加購入が必要になる場合があります。
- ライフライン関連費用: 電気、ガス、水道、インターネットなどの契約・設置費用。
- 保険料: 火災保険、地震保険など。
- 予備費: 想定外の工事やトラブルに備えるための費用。築古物件の場合、解体してみないと分からない問題が出てくることもあります。
- その他: 場合によっては、敷地内の庭木の伐採や、物置などの解体費用が発生することもあります。
これらの費用も考慮に入れて、全体の資金計画を立てることが大切です。
利用できる可能性のある補助金制度
空き家バンク物件の取得やリノベーション、そして移住を支援するための補助金制度は、国や各自治体によって様々なものが設けられています。これらの補助金を活用することで、費用負担を軽減できる可能性があります。
補助金制度は常に内容が変更されたり、募集期間が定められていたりするため、必ず最新の情報を各制度の公式サイトや自治体の窓口で確認するようにしてください。
国の主な補助金制度
国の補助金制度は、建物の性能向上や特定のテーマに沿った改修を支援するものが多くあります。
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業: 既存住宅の性能向上(耐震、省エネ、劣化対策など)や三世代同居対応などのリフォームを支援する補助金です。一定の要件を満たすことで、リフォーム費用の一部に補助が受けられます。
- 既存住宅省エネ改修事業: 窓の断熱改修や断熱材の設置など、省エネ性能を高めるリフォームを支援する補助金です。
- 子育てエコホーム支援事業(期間による変動あり): エネルギー価格高騰の影響を受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯等による省エネ改修等を支援する事業です。
これらの国の補助金は、リフォーム工事内容によって活用できるかどうかが決まります。特に築古物件で行うことの多い耐震改修や断熱改修は、補助金の対象となることが多い傾向にあります。
自治体の主な補助金制度
多くの自治体では、空き家の有効活用や移住促進のために独自の補助金制度を設けています。
- 空き家改修補助金: 空き家バンク登録物件や特定された空き家を改修する費用の一部を補助する制度です。補助率は自治体によって様々ですが、改修費用の定率や上限額が定められています。
- 移住・定住促進補助金: 移住者が住宅を取得または改修する費用、引越し費用などを補助する制度です。特定の年齢や家族構成、勤務地などの条件が設定されていることがあります。
- 耐震改修補助金: 自治体独自の耐震診断や耐震改修に対する補助金です。国の制度と併用可能な場合もあります。
- 省エネ改修補助金: 自治体独自の省エネリフォームに対する補助金です。
自治体の補助金は、その地域に「移住すること」「空き家バンクを利用すること」「特定の場所に居住すること」などが条件となっていることが多いです。複数の補助金を組み合わせることで、さらに手厚い支援を受けられる場合もあります。
補助金申請のポイント
- 情報収集: 検討している移住先の自治体の公式サイトや窓口で、どのような補助金があるか最新情報を確認しましょう。
- 対象工事・条件の確認: 補助金ごとに、対象となる工事内容、申請者の条件、建物の条件などが細かく定められています。ご自身の計画が条件を満たすか必ず確認してください。
- 申請時期: 補助金には募集期間や予算上限があります。多くの場合、工事の「契約前」に申請が必要となります。計画的に準備を進めることが重要です。
- 専門家への相談: リフォーム業者や移住支援窓口などが補助金制度に詳しい場合があります。相談してみることも有効です。
費用全体像の把握と資金計画
空き家バンク物件の取得からリノベーション、移住までにかかる費用は、取得費用、リノベーション費用、その他の諸費用を合計したものとなります。これに対して、利用できる補助金でどれだけ費用を軽減できるかを把握することが、費用全体像の理解に繋がります。
費用全体像の考え方
費用全体像 = (空き家取得費用) + (リノベーション費用) + (その他の諸費用) - (利用できる補助金額)
例えば、以下のようなシミュレーションが考えられます。(数値はあくまで目安です)
- 物件価格: 500万円
- 取得諸費用(仲介手数料、登記費用、税金など): 50万円
- リノベーション費用(必須改修含むフルリノベ): 1,000万円
- その他の諸費用(引越し、家具家電など): 100万円
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- 費用合計(補助金考慮前): 1,650万円
ここで、利用できる補助金が例えば以下だった場合:
- 自治体の空き家改修補助金: 200万円
- 国の省エネ改修補助金: 50万円
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- 合計補助金額: 250万円
最終的な費用全体像は、1,650万円 - 250万円 = 1,400万円 となります。
資金計画のポイント
- 自己資金の確認: ご自身で用意できる頭金や予備費として使える金額を確認します。
- 住宅ローンの検討: 取得費用とリノベーション費用を合算して借りられる「リフォーム一体型ローン」などがあります。金利や返済期間を比較検討しましょう。
- 補助金の組み込み: 利用可能な補助金を資金計画に組み込むことで、借入額を減らすことができます。ただし、補助金はすぐに入金されるわけではないため、つなぎ融資などが必要になる場合もあります。
- 予備費の確保: 築古物件の場合、計画通りに進まない可能性も考慮し、ある程度の予備費を用意しておくことをお勧めします。
資金計画を立てる際は、金融機関やファイナンシャルプランナー、移住先の自治体窓口などに相談することも有効です。
結論・まとめ
空き家バンクの築古物件を取得し、ご自身の理想の住まいとして再生させることは、費用面での不安が伴うかもしれません。しかし、かかる費用の内訳や目安を事前にしっかりと把握し、特に築古物件で必要になりやすい必須改修の費用を理解しておくことは、不安解消の第一歩となります。
さらに、国や各自治体が提供している様々な補助金制度は、これらの費用負担を大きく軽減する強力な味方となります。耐震改修や断熱改修といった必須改修は、補助金の対象となりやすい工事でもあります。
費用全体像を把握し、利用できる補助金を最大限に活用した上で、無理のない資金計画を立てることが、空き家バンクを通じた安心できる移住・住まいづくりに繋がります。まずは移住を検討している地域の空き家バンク情報や自治体の補助金情報を収集し、必要に応じて専門家へ相談しながら、具体的な計画を進めていくことをお勧めします。