空き家バンクで移住を考え始めたら読む記事:最初にかかる費用と知っておきたい補助金
空き家バンクでの移住、まず知っておくべき費用と補助金
都市部を離れ、自然豊かな地方での暮らしや、ゆったりとした時間の流れに憧れ、空き家バンクでの住まい探しを検討されている方もいらっしゃるでしょう。しかし、空き家バンク物件の購入やリノベーションには、物件価格以外にも様々な費用がかかります。これらの費用や、利用できる可能性のある補助金について、具体的にどのようなものがあるのか分からず、不安を感じている方も少なくないかもしれません。
この記事では、空き家バンク物件の取得から移住後にかかる可能性のある費用全体像と、費用負担を軽減するために活用できる補助金制度について、建築やリノベーションの専門知識がない方にも分かりやすく解説いたします。この情報が、あなたの移住計画を現実的なものにするための一助となれば幸いです。
空き家取得にかかる費用
空き家バンクに掲載されている物件は、比較的安価なものが多いという魅力があります。しかし、実際に物件を取得する際には、表示されている価格以外にもいくつかの費用が発生します。
1. 物件価格(売買代金)
これは空き家バンクに表示されている物件そのものの価格です。立地や築年数、物件の状態によって大きく異なります。自治体によっては、無償譲渡の物件が登録されていることもありますが、その場合でも後述する諸費用は発生します。
2. 仲介手数料
不動産業者を介して空き家バンク物件を購入する場合、不動産業者に支払う仲介手数料が発生します。宅地建物取引業法により上限額が定められており、「売買代金×3%+6万円+消費税」が一般的な計算式です。例えば、物件価格が500万円の場合、仲介手数料の上限は「500万円 × 3% + 6万円 + 消費税」となります。
3. 登記費用
不動産の所有権移転や抵当権設定などにかかる費用です。 * 登録免許税: 登記にかかる税金です。固定資産税評価額に基づいて計算されます。所有権移転登記の場合、原則として固定資産税評価額の2%ですが、特定の軽減措置が適用される場合もあります。 * 司法書士への報酬: 登記手続きを司法書士に依頼する場合に支払う費用です。司法書士によって異なりますが、数万円から10万円程度が目安となります。
4. 税金
不動産取得時にかかる税金として、不動産取得税があります。不動産を取得した際に一度だけ課税される都道府県税です。固定資産税評価額に対して一定の税率(原則4%)がかけられますが、住宅用の土地や建物については軽減措置が適用される場合があります。また、毎年課税される固定資産税や都市計画税も、取得後から発生します。これらの税額は物件の評価額によって異なります。
5. 印紙税
不動産売買契約書に貼付する収入印紙代です。契約金額に応じて税額が定められています。
6. その他
- 固定資産税・都市計画税の清算金: 物件の引き渡し日を基準に、売主と買主で日割り清算するのが一般的です。
- 境界測量費用: 土地の境界が不明確な場合などに必要となることがあります。
- 物件調査費用: 地盤調査や建物状況調査(ホームインスペクション)などを専門業者に依頼する場合にかかる費用です。特に古い物件の場合は、建物の状態を把握するために実施を検討すると良いでしょう。
これらの費用は、物件価格の他に物件価格の5%〜10%程度が目安となることが多いですが、物件の状態や手続きによって大きく変動します。
リノベーションにかかる費用
空き家バンク物件は、そのままでは住めない状態であることが多く、リノベーションが必要となるケースがほとんどです。リノベーションの費用は、工事内容によって大きく幅があります。
リノベーションの種類と費用目安
- 部分的なリノベーション: 水回り(キッチン、浴室、トイレ)の改修、壁や床の張り替え、間取りの一部変更など、特定の箇所のみを改修する場合です。内容によりますが、1箇所あたり数十万円から数百万円程度が目安となります。
- スケルトンリノベーション(フルリノベーション): 建物の骨組みだけを残して内外装を全面的に改修する場合です。間取りを大きく変更したり、耐震補強や断熱改修を同時に行ったりすることが可能です。費用は建物の規模や状態、選ぶ素材によって大きく異なりますが、一般的に10万円~20万円/平米以上が目安となることが多いです。木造住宅か鉄骨・RC造かによっても費用感は変わります。
費用を抑えるポイント
- DIYを取り入れる: 可能な範囲で自分で作業を行うことで、工事費用を抑えることができます。ただし、専門知識が必要な箇所や安全に関わる箇所はプロに任せましょう。
- 既存のものを活かす: まだ使える建具や設備はそのまま利用したり、再利用したりすることを検討します。
- シンプルなデザインにする: 複雑なデザインや特殊な素材は費用が高くなる傾向があります。
- 複数の業者から相見積もりを取る: 同じ工事内容でも業者によって費用が異なる場合があります。複数の業者から見積もりを取り、比較検討することが重要です。
- 補助金制度を活用する: 後述する補助金制度を上手に活用することで、費用負担を軽減できます。
リノベーション費用は物件の状態に大きく依存するため、事前に専門家による建物診断(ホームインスペクション)を受けることを強くお勧めします。これにより、必要な工事内容と費用をより正確に把握することができます。
その他の諸費用
空き家バンク物件の取得・リノベーション以外にも、移住に伴って発生する可能性のある費用があります。
- 引越し費用: 現在の住まいから新しい住まいへの引越しにかかる費用です。荷物の量や移動距離によって異なります。
- 家具・家電購入費: 新居に合わせて家具や家電を買い替える場合に必要となります。
- 保険料: 火災保険や地震保険への加入費用です。
- ライフライン整備費用: 電気、ガス、水道、インターネットなどの新規契約や回線工事にかかる費用です。
- 仮住まい費用: リノベーション期間中に一時的に別の場所に住む場合の家賃や滞在費です。
これらの費用も考慮に入れて資金計画を立てることが重要です。
利用できる可能性のある補助金制度
空き家バンク物件の取得やリノベーション、移住に対して、国や自治体が様々な補助金制度を設けています。これらの制度を上手に活用することで、費用負担を大きく軽減できる可能性があります。
国の補助金制度
国の補助金は、特定の目的(例:省エネ化、耐震化、多世帯同居対応など)のリフォームに対して広く利用できるものが多いです。
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業: 既存住宅の長寿命化や省エネ化など、性能向上リフォームに対して費用の一部を補助する制度です。所定の要件を満たす必要があります。
- こどもエコすまい支援事業(または後継事業): 子育て世帯・若者夫婦世帯による省エネ改修等に対して補助を行う事業です。(※制度内容は年度によって変更される可能性があるため、最新の情報を確認してください。)
- 住宅ローン減税: 住宅ローンを利用して特定の要件を満たす住宅の新築・取得・増改築等を行った場合、所得税や住民税から控除が受けられる制度です。
自治体の補助金制度
多くの地方自治体では、移住・定住促進や空き家対策を目的とした独自の補助金制度を設けています。これらは自治体によって内容が大きく異なります。
- 空き家改修補助金: 空き家バンクに登録された物件や特定の要件を満たす空き家を改修する費用の一部を補助する制度です。補助率や上限額、対象となる工事などが自治体によって細かく定められています。
- 移住支援金: 特定の地域への移住者に対して、一定額の支援金を支給する制度です。東京圏からの移住などを対象としていることが多いです。
- 取得補助金: 空き家バンク物件の購入費用の一部を補助する制度です。
- 家財処分費補助: 空き家の残置物の撤去・処分にかかる費用を補助する制度です。
補助金申請のポイント
- 最新情報の確認: 補助金制度は年度ごとに内容が変わったり、募集期間が限定されていたりします。必ず利用したい年度の最新情報を、自治体や国の公式サイトで確認してください。
- 対象となる条件の確認: 補助金には、申請者の年齢や所得、物件の築年数や所在地、工事内容など、様々な要件があります。自身の状況や希望する工事が要件を満たしているか、事前にしっかりと確認することが重要です。
- 申請期間と手続き: 補助金には申請期間が設けられており、期間外の申請は受け付けられません。また、申請には書類の準備や工事内容の計画など、手続きに時間がかかる場合があります。早めに情報収集を開始し、計画的に準備を進めましょう。
- 併用できるか確認: 複数の補助金制度を併用できる場合とできない場合があります。併用を検討する場合は、それぞれの制度の規約を確認してください。
- 専門家への相談: 不動産業者やリフォーム業者の中には、補助金制度に詳しい担当者がいる場合があります。相談することで、利用可能な補助金や申請方法についてアドバイスを得られる可能性があります。
費用全体像の把握と資金計画
ここまで見てきたように、空き家バンク物件の取得・リノベーションには様々な費用がかかります。これらの費用と利用可能な補助金を考慮に入れた上で、具体的な資金計画を立てることが、移住を成功させるための鍵となります。
費用全体像の考え方
費用全体像は、概ね以下の項目で構成されます。
費用総額 = (物件価格 + 取得にかかる諸費用) + リノベーション費用 + その他の移住関連費用
ここから、利用できる補助金や住宅ローン減税などを差し引いた金額が、自己資金や住宅ローンで賄う必要がある金額となります。
資金計画のポイント
- 自己資金の上限を決める: 貯蓄の中から、物件購入やリノベーション、当面の生活費に充てられる金額を明確にします。
- 資金調達方法を検討する: 自己資金だけでは不足する場合、住宅ローン(リフォーム一体型ローンなど)の利用を検討します。地方銀行や信用金庫などが、空き家購入やリフォームに積極的な場合もあります。
- 予備費を確保する: リノベーション工事中に予期せぬ問題が見つかったり、追加で工事が必要になったりすることも考えられます。計画の10%〜20%程度の予備費を確保しておくと安心です。
- 長期的な視点で考える: 取得費用やリノベーション費用だけでなく、移住後の生活費、固定資産税、建物の維持管理費用なども考慮に入れた、長期的な資金計画を立てましょう。
具体的な金額シミュレーション例(目安)
以下はあくまで一般的な目安であり、物件の場所や状態、工事内容によって大きく異なります。
- 物件価格: 500万円
- 取得にかかる諸費用(仲介手数料、登記費用、税金など): 50万〜100万円程度(物件価格の10%〜20%程度)
- リノベーション費用(部分改修): 300万円〜800万円程度(工事内容による)
- リノベーション費用(フル改修): 1000万円〜2000万円以上(規模や内容による)
- その他の移住関連費用(引越し、家具家電など): 50万円〜100万円程度
補助金を考慮した場合: 例えば、自治体の空き家改修補助金で上限100万円、国の省エネリフォーム補助金で上限50万円が利用できた場合、リノベーション費用から最大150万円が軽減される可能性があります。
重要なのは、これらの費用項目を全て洗い出し、自身の希望する物件やリノベーション内容に基づいた、より具体的な見積もりを取得することです。
結論・まとめ
空き家バンクを利用した移住は、魅力的な選択肢の一つですが、費用に関する不安はつきものです。しかし、費用全体像を正確に把握し、国や自治体の様々な補助金制度を賢く活用することで、その不安を解消し、現実的な計画を立てることが可能です。
最初にかかる取得費用、建物の状態に応じたリノベーション費用、そして引越しなどの諸費用。これらを一つずつ整理し、利用できる補助金や融資制度について情報収集を進めることが、移住への第一歩となります。
費用に関する不明点や不安な点があれば、まずは自治体の空き家バンク担当窓口や、地元の不動産業者、リフォーム業者に相談してみることをお勧めします。専門家の知見を借りながら、一つずつ課題をクリアしていくことが、理想の移住を実現するための最善策と言えるでしょう。
計画的な準備を進め、空き家バンクでの素晴らしい移住を実現してください。