空き家バンクで叶えるリノベーション、予算別に見る費用と範囲、活用できる補助金ガイド
空き家バンクでのリノベーション費用、予算に応じてどこまでできる?
都市部での生活から離れ、自然豊かな地方での暮らしに憧れを持つ30代の皆様にとって、空き家バンクを活用した住まい探しは魅力的な選択肢の一つかもしれません。しかし、実際に空き家バンクの物件を取得し、理想の住まいにリノベーションするためには、一体どれくらいの費用がかかるのだろうか、利用できる補助金はあるのだろうか、といった金銭的な不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、空き家バンク物件の取得からリノベーション、そして新しい暮らしを始めるまでにかかる費用の全体像を分かりやすく解説します。特に、リノベーションにかかる費用について、予算別にどのような工事が可能か、その目安はどの程度なのかを具体的にご紹介します。さらに、費用負担を軽減するために活用できる可能性のある補助金制度についても触れていきます。この記事を通して、皆様が抱える費用への不安が少しでも解消され、具体的な計画を立てるための一助となれば幸いです。
空き家取得にかかる費用
空き家バンクに掲載されている物件は、比較的安価な価格設定がされていることが多い傾向にあります。しかし、表示されている物件価格だけが取得にかかる費用ではありません。物件価格以外に、以下のような様々な費用が発生します。
- 仲介手数料: 不動産業者を介して購入する場合に発生します。宅地建物取引業法により上限額が定められています(売買価格によって異なりますが、通常「(売買価格×3%+6万円)+消費税」が上限となります)。
- 登記費用: 所有権移転登記などを行う司法書士への報酬や登録免許税がかかります。物件の固定資産評価額や土地・建物の数によって変動します。
- 各種税金: 不動産取得税(取得後にかかる税金)や、売買契約書に貼付する印紙税などが必要です。税率は自治体や特例措置の有無によって異なります。
- 固定資産税・都市計画税の精算金: 物件を引き渡す日を基準に、その年度の税金を売主と買主で日割り精算することが一般的です。
- その他: 火災保険料や、必要に応じて行う物件調査(インスペクション)費用などがかかる場合があります。
これらの諸費用は、一般的に物件価格の5%〜10%程度を目安とすることが多いですが、物件価格が低い場合は割合が高くなることもあります。
リノベーションにかかる費用:予算別の可能性
空き家バンクの物件は築年数が経過しているものが多く、快適に暮らすためには何らかのリノベーションが必要となるケースがほとんどです。リノベーション費用は、建物の状態、工事の範囲や内容、使用する建材のグレード、依頼する業者などによって大きく変動します。読者の皆様が抱える「予算内でどこまでできるのだろう?」という疑問に答えるため、ここでは予算別にどのようなリノベーションが考えられるか、その費用目安と共に解説します。
費用の目安はあくまで一般的なものであり、個別の物件の状態や地域によって大きく異なりますのでご注意ください。
1. 予算:〜300万円程度
この予算帯では、大規模な構造変更や間取り変更は難しいですが、住み始めるために最低限必要となる部分的な改修や、美観を整える工事が中心となります。
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可能な工事の例:
- 内装の一部改修(壁紙・床材の張り替えなど、一室または部分的に)
- 水回り設備の部分的な交換(トイレのみ、洗面台のみなど)
- 外壁や屋根の部分的な補修・塗装
- 給湯器の交換
- ハウスクリーニング
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費用の目安: 工事内容によりますが、最低限の修繕やクリーニングであれば数十万円から、内装や水回り一部改修を含む場合で100万円〜300万円程度となるでしょう。
2. 予算:300万円〜1000万円程度
この予算帯になると、水回り全体の交換や、ある程度の範囲での内装改修、断熱性能の向上など、暮らしの快適性を高めるリノベーションが可能になります。多くの移住者がこのあたりの予算でリノベーションを行っている印象です。
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可能な工事の例:
- キッチン、浴室、洗面所、トイレといった水回り設備の全面交換
- 内装の全面改修(壁、床、天井の仕上げ変更)
- 窓の交換や内窓設置による断熱改修
- 間取りの部分的な変更(壁の撤去によるLDKの拡大など)
- 耐震補強工事の一部(建物の状態による)
- 屋根の葺き替えや外壁の全面塗装
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費用の目安: どこまで包括的に行うかで大きく変わります。水回り一新と内装全面で500万円〜800万円程度、断熱改修や部分的な間取り変更を加えると700万円〜1000万円程度が見込まれます。
3. 予算:1000万円〜程度
この予算帯では、建物の骨組み(躯体)を残して全てを刷新するような、いわゆる「フルリノベーション」や、大規模な間取り変更、性能向上リノベーション(耐震、断熱、省エネなど)が可能になります。建物のポテンシャルを最大限に引き出し、理想の暮らしをゼロから作り上げることができます。
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可能な工事の例:
- フルリノベーション(躯体以外を全て解体し再構築)
- 大規模な間取り変更、増築・減築
- 抜本的な耐震補強工事
- 高レベルな断熱・気密改修(ZEHレベルなど)
- 設備配管の全面更新
- 外観デザインの大幅な変更
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費用の目安: 工事の規模や仕様によりますが、1000万円から2000万円、場合によってはそれ以上となることもあります。築年数が古いほど、構造や基礎部分の補強、給排水管の交換などが必須となり費用がかさむ傾向にあります。
リノベーション費用を抑えるポイント
- 優先順位を決める: まずは安全・安心に関わる部分(耐震、雨漏りなど)、次に快適な暮らしに必須な部分(水回り、断熱の一部など)から着手し、費用に応じて優先順位を決めましょう。
- 現状を活かす: 残せるものは残す、部分的な補修で済むなら全面的に変えないなど、物件の既存の状態を可能な限り活かすことで費用を抑えられます。
- DIYの検討: 難しい構造部分や設備工事はプロに依頼し、壁の塗装や床貼りなど、比較的簡単な部分はご自身で行うDIYを取り入れることで費用を節約できます。ただし、ご自身のスキルや時間、安全性を十分に考慮して判断してください。
- 複数の業者から相見積もりを取る: 同じ工事内容でも、業者によって見積もりは異なります。複数の業者から見積もりを取り、内容と費用を比較検討することが重要です。
その他の諸費用
取得費用、リノベーション費用以外にも、移住や新しい暮らしの開始に伴って発生する費用があります。
- 引越し費用: 現在お住まいの場所から新居までの距離や荷物の量によって大きく変動します。
- 家具・家電購入費: 新しい住まいに合わせて家具や家電を買い揃える費用です。
- 通信環境整備費: インターネット回線の工事費用などです。特に地方では光ファイバーが来ていないエリアなど、事前に確認が必要です。
- 保険料: 火災保険、地震保険など、住宅に関する保険料です。リノベーションの内容によって保険金額の見直しが必要になる場合もあります。
これらの費用も、計画の際に考慮に入れておくことが大切です。
利用できる可能性のある補助金制度
空き家バンク物件の取得やリノベーション、移住に対して、国や自治体から様々な補助金や助成金、支援制度が用意されていることがあります。これらの制度をうまく活用することで、費用負担を大きく軽減できる可能性があります。
補助金制度は多岐にわたりますが、ここでは代表的なものや、空き家バンク利用者が活用しやすい傾向にある制度について解説します。制度の内容や名称は変更されることがありますので、必ず最新の情報を各制度の公式サイトでご確認ください。
国の主な補助金制度の例
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業: 既存住宅の性能向上(耐震、省エネ、劣化対策など)や三世代同居対応などのリフォームを支援する制度です。一定の基準を満たすリフォームに対して補助金が交付されます。空き家を性能向上リノベーションする場合に活用できる可能性があります。
- こどもエコすまい支援事業(※現在は終了。後継事業に注意): 高い省エネ性能を持つ住宅の新築や省エネ改修などを支援する事業でした。こうした省エネ関連の補助金は、名称や内容を変えて継続的に実施される傾向にあります。窓や壁の断熱改修、高効率設備(給湯器など)の設置などが対象となることが多いです。
- 介護保険制度における住宅改修費の支給: 要介護・要支援認定を受けた方が、自宅に手すりの設置や段差解消などのバリアフリー改修を行う場合に費用の一部が支給される制度です。将来的に必要になる可能性も考慮しておくと良いでしょう。
自治体の主な補助金制度の例
地方自治体(都道府県や市町村)は、移住・定住促進や空き家対策に力を入れており、独自の様々な補助金制度を設けています。
- 空き家改修補助金: 空き家バンク登録物件や、自治体が指定する空き家を取得または賃借し、改修する場合に費用の一部を補助する制度です。補助率や上限額は自治体によって大きく異なりますが、改修費用の3分の1や2分の1を補助するといった制度が見られます。
- 移住・定住促進補助金: 市町村への移住者に対して、住宅取得費用や家賃の一部、引越し費用などを補助する制度です。
- 子育て世帯向け改修補助金: 子育て世帯や若者夫婦世帯が空き家を取得・改修する場合に、補助率を引き上げたり、対象を限定したりする制度です。
- 耐震改修補助金: 既存住宅の耐震診断や耐震改修工事に対して補助を行う制度です。特に旧耐震基準(昭和56年以前)で建てられた物件の場合、安全確保のために耐震改修が重要となり、多くの自治体が支援しています。
- その他: 太陽光発電システム設置補助、浄化槽設置補助、解体費用補助(改修ではなく建て替えや更地にする場合)、地域材利用促進補助など、様々な種類があります。
補助金申請のポイント
- 最新情報を確認する: 補助金制度は年度によって内容が変わったり、募集期間が限定されていたりします。必ず各制度や自治体の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
- 条件を確認する: 制度ごとに、対象となる人(年齢、世帯構成、所得など)、対象となる物件(築年数、構造、エリアなど)、対象となる工事内容、申請期間など、細かく条件が定められています。ご自身の状況や物件が条件を満たすか、事前にしっかりと確認が必要です。
- 申請のタイミング: 工事契約前や着工前に申請が必要な制度がほとんどです。事前に情報収集を行い、計画的に手続きを進めることが重要です。
- 併用について: 複数の補助金制度を併用できる場合とできない場合があります。希望する工事に対してどの補助金が使えるか、併用は可能かなどを自治体の担当窓口に相談してみることをお勧めします。
費用全体像の把握と資金計画
空き家バンク物件取得から移住、リノベーションまでにかかる費用は、物件価格、改修内容、移住先の地域などによって大きく変動します。漠然とした不安を解消するためには、費用全体像を把握し、具体的な資金計画を立てることが何より大切です。
費用全体像を考えるステップ
- 物件探し: まずは希望するエリアで、予算や希望条件(立地、広さ、築年数など)にある程度合う物件を探します。空き家バンクだけでなく、地元の不動産業者にも相談してみましょう。
- 物件の状態確認とリノベーションの方向性検討: 気になる物件が見つかったら、可能であれば専門家(建築士、リフォーム業者など)に相談し、建物の状態を診断してもらいましょう(インスペクション)。同時に、どのようなリノベーションが必要か、理想の暮らしを実現するためにはどのような改修をしたいかを具体的にイメージします。予算別に可能なリノベーションの範囲を参考にしてみましょう。
- 概算費用の算出:
- 物件価格、取得にかかる諸費用(仲介手数料、登記費用、税金など)の概算を算出します。
- 検討しているリノベーションの方向性に基づき、リフォーム業者に概算見積もりを依頼します。複数の業者から見積もりを取ることをお勧めします。この段階で、必要な工事(耐震、断熱、水回り等)と希望する工事(デザイン変更等)を分け、それぞれにかかる費用を把握すると良いでしょう。
- 引越し費用や当面の生活費など、その他の諸費用も考慮に入れます。
- 利用可能な補助金の情報収集と見込み額の確認: 希望するリノベーション内容やご自身の状況が対象となる補助金がないか、国や自治体の情報を確認します。補助金の要件を確認し、活用できそうな制度があれば、補助の見込み額を概算費用から差し引いて考えます。自治体の担当窓口に相談すると、利用できる制度を教えてもらえることがあります。
- 資金計画の策定: 自己資金でどこまで賄えるか、住宅ローンやリフォームローンをどの程度利用するかなどを検討し、資金計画を立てます。取得費用とリノベーション費用をまとめてローンに組み込める「一体型ローン」などもありますので、金融機関に相談してみましょう。
資金計画シミュレーション例(あくまで目安です)
- 物件価格: 500万円
- 取得にかかる諸費用: 物件価格の約8%として 40万円
- リノベーション費用: 水回り一新+内装全面改修+部分断熱として 800万円
- その他の諸費用: 引越し、家具等 100万円
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合計概算費用: 500万円 + 40万円 + 800万円 + 100万円 = 1440万円
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活用できる可能性のある補助金:
- 自治体の空き家改修補助金(改修費用の1/2、上限200万円の場合): 200万円
- 国の省エネ改修補助金(窓断熱など): 50万円
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補助金合計見込み額: 250万円
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自己負担額(概算): 1440万円 - 250万円 = 1190万円
この自己負担額を、自己資金やローンで賄う計画を立てる、という流れになります。リノベーション内容を調整することで、費用を抑えることも可能です。
結論・まとめ
空き家バンクを利用した移住とリノベーションは、費用について不安を感じやすいプロセスかもしれません。しかし、取得にかかる費用、リノベーションの費用目安、そして活用できる補助金制度について事前にしっかりと情報収集し、計画的に進めることで、その不安を大きく軽減することができます。
リノベーション費用は、予算に応じて可能な工事範囲や内容が変わります。ご自身の理想の暮らしと現実的な予算を照らし合わせながら、どこまでリノベーションを行うか優先順位を決めることが重要です。
国や自治体の補助金制度は、費用負担を和らげる強力な味方となります。移住を検討されている地域の自治体窓口や、空き家バンク担当部署に相談することで、利用できる可能性のある具体的な制度を知ることができます。
費用全体像を把握し、資金計画を立て、補助金制度を賢く活用しながら、理想の住まいづくりを進めてください。情報収集と計画を丁寧に行うことが、空き家バンクでの新しい暮らしを実現するための鍵となります。