空き家バンクのリノベーション費用、賢く抑える具体的な方法と補助金活用ガイド
空き家バンクを利用した地方への移住は、魅力的な選択肢の一つです。しかし、「古い物件だからリノベーション費用が高額になるのでは?」「そもそも総額でどれくらいかかるのか?」といった費用に関する不安をお持ちの方も少なくないでしょう。特に、建築やリノベーションの専門知識がない場合、こうした不安はより一層大きくなるかもしれません。
この記事では、空き家バンク物件のリノベーションにかかる費用に焦点を当て、費用を賢く抑えるための具体的な方法と、国や自治体が提供する補助金制度について分かりやすく解説します。費用に関する不安を解消し、計画的に移住を実現するための一助となれば幸いです。
空き家取得にかかる費用(概要)
リノベーション費用について詳しく解説する前に、まずは物件取得にかかる基本的な費用についても触れておきます。空き家バンクに掲載されている物件価格そのもの以外にも、以下のような諸費用が発生します。
- 仲介手数料: 不動産会社を通じて購入する場合にかかります。宅地建物取引業法で上限が定められています。
- 登記費用: 所有権移転登記などにかかる費用です。登録免許税や司法書士への報酬が含まれます。
- 不動産取得税: 物件取得後に一度だけ課税される税金です。軽減措置が適用される場合もあります。
- 固定資産税・都市計画税: 毎年課税される税金です。引き渡し日によって清算が発生します。
- その他: 印紙税、ローンを利用する場合は各種手数料や保証料などがかかります。
これらの諸費用は、物件価格の概ね6%~10%程度が目安とされていますが、条件によって変動します。
リノベーションにかかる費用
空き家バンク物件は築年数が経過していることが多く、快適に暮らすためには何らかのリノベーションが必要となるケースがほとんどです。リノベーションの費用は、その内容や規模によって大きく異なります。
リノベーションの種類と費用目安
- 部分的なリノベーション: キッチンや浴室などの水回り、内装の一部改修、間取り変更を伴わない外壁塗装など、特定の箇所のみを改修する場合です。費用は数十万円から数百万円程度が目安となります。
- 骨組みを残して全体を改修(スケルトンリノベーション): 構造躯体のみを残し、内装や設備、間取りなどを一新する場合です。新築に近い状態にできますが、費用も高額になりやすく、物件の規模や状態によりますが、数百万円から1,000万円以上かかることもあります。
- 耐震補強や断熱改修など性能向上のリフォーム: 既存の状態に加え、住宅性能を高めるための工事です。耐震補強は数十万円から数百万円、断熱改修は範囲によりますが数十万円から数百万円程度が目安です。
これらの費用はあくまで目安であり、物件の状態(構造、老朽化度合いなど)、使用する建材や設備のグレード、依頼する業者によって大きく変動します。
リノベーション費用を賢く抑える具体的な方法
リノベーション費用は大きな金額になりやすいため、賢く計画を進めることが重要です。以下の点を意識することで、費用を抑えることが可能です。
- 優先順位を明確にする: 最初から全てを完璧にしようとせず、まずは「安全・安心に暮らすために必要な工事(例:耐震補強、雨漏り修理)」や「QOL(生活の質)に直結する工事(例:水回り、断熱)」に絞り込みます。予算に応じて段階的にリノベーションを行うことも検討できます。
- 相見積もりを複数から取る: 複数のリフォーム会社や工務店から見積もりを取ることは必須です。同等の工事内容でも、業者によって費用は異なります。少なくとも3社程度から見積もりを取り、比較検討することをお勧めします。見積もりの内容をしっかり確認し、不明点は遠慮なく質問しましょう。
- セルフリノベーションの可否を検討する: DIYが得意な場合、内装の仕上げ(壁の塗装や床貼りなど)の一部を自分で行うことで、工賃を節約できます。ただし、専門的な知識や技術が必要な箇所(構造に関わる部分、電気・水道工事など)は必ずプロに依頼してください。無理なセルフリノベーションはかえってコスト増や安全性の問題につながる可能性があります。
- 既存のものを活かす: まだ使える設備や建材は無理に交換せず、クリーニングや補修で対応することを検討します。特に柱や梁などの構造材、建具などは、古民家の魅力として活かせる場合もあります。
- 仕様決めを慎重に行う: 工事内容や使用する建材・設備を途中で変更すると、追加費用が発生しやすいです。事前に業者と十分に打ち合わせを行い、納得した上で仕様を確定させることが重要です。
- 補助金制度の活用を前提に計画する: 後述する補助金制度の中には、特定の工事(耐震、断熱、バリアフリーなど)を対象としたものがあります。補助金を活用することを視野に入れて、工事内容を検討することで、自己負担額を軽減できます。
その他の諸費用
物件取得、リノベーション費用以外にも、移住にあたっては以下のような費用が発生する可能性があります。
- 引越し費用
- 新しい家具や家電の購入費用
- 火災保険や地震保険の保険料
- (必要に応じて)仮住まいの費用
- 移住先の地域での当面の生活費
これらの費用も予算計画に含めておくことが大切です。
利用できる可能性のある補助金制度
空き家バンク物件の取得やリノベーションには、様々な補助金制度が利用できる可能性があります。これらの制度は、移住者の負担を軽減し、空き家の活用を促進することを目的としています。
主な補助金制度の種類と概要
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国の補助金:
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業: 既存住宅の長寿命化や省エネルギー化、耐震化などを目的としたリフォーム工事を支援するものです。一定の基準を満たすことで補助金が交付されます。
- こどもエコすまい支援事業(※終了。後継事業に注意): 住宅の省エネ改修などに対して補助金が交付される事業でした。最新の国の住宅省エネ関連事業(例:住宅省エネ2024キャンペーンなど)を確認することが重要です。
- 断熱リフォームに関する補助金: 窓や壁、床などの断熱改修に対して補助金が交付される場合があります。省エネルギー化は光熱費の削減にもつながります。
- 耐震改修に関する補助金: 地震に対する安全性を高めるための耐震補強工事に対して補助金が交付される制度です。多くの自治体でも独自の補助金があります。
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自治体(都道府県・市区町村)の補助金:
- 空き家改修補助金: 空き家バンクに登録された物件を改修する際に利用できる、自治体独自の補助金です。補助率や上限額、対象となる工事内容は自治体によって大きく異なります。移住者向けの加算がある場合もあります。
- 移住・定住促進補助金: 物件取得費用や引越し費用の一部を補助するなど、移住そのものを支援する制度です。
- 子育て世帯・若者夫婦世帯向け補助金: 特定の世帯を対象に、住宅取得や改修費用を補助する制度です。
- 耐震改修補助金: 国の制度に加えて、自治体独自の耐震改修補助制度が整備されていることが多いです。
- その他: 特定の地域での居住促進、多世代同居改修、 telework環境整備など、ユニークな補助金が存在することもあります。
補助金活用のポイント
- 最新情報を確認する: 補助金制度は頻繁に内容が変更されたり、募集期間が限られていたりします。必ず、利用を検討している補助金の公式サイトや、該当する自治体のウェブサイトで最新の情報を確認してください。
- 複数の制度を組み合わせる(併用): 一つの工事に対して複数の補助金制度を併用できる場合があります。ただし、併用が認められているか、それぞれに条件がないかを事前に確認が必要です。
- 申請時期と流れを把握する: 多くの補助金は、工事の契約前や着工前に申請が必要です。補助金の申請手続きは時間がかかる場合があるため、余裕をもって計画を立てることが重要です。
- 対象となる条件を確認する: 補助金には、申請者の要件(年齢、居住地、年収など)、対象となる物件の要件(築年数、構造など)、対象となる工事の要件などが細かく定められています。ご自身の状況や計画している工事が対象となるか、事前にしっかりと確認しましょう。
- 専門家や自治体の窓口に相談する: 補助金制度は複雑な場合もあります。リフォーム会社や工務店の中には補助金申請のサポートを行っている業者もいます。また、自治体の空き家バンク担当窓口や移住相談窓口でも情報提供やアドバイスを得られる場合があります。積極的に活用しましょう。
費用全体像の把握と資金計画
空き家バンク物件の取得・リノベーション・移住にかかる費用全体像を把握し、具体的な資金計画を立てることが、費用に関する不安を解消し、計画をスムーズに進める上で最も重要です。
費用全体像の考え方
費用全体像は、以下の要素を合計して考えます。
費用全体像 = 物件価格 + 取得諸費用 + リノベーション費用 + その他の諸費用
ここに、利用できる補助金を差し引いて、自己資金やローンで賄う金額を算出します。
自己資金等で賄う金額 = 費用全体像 - 補助金合計額
資金計画を立てる上でのポイント
- 現実的なリノベーション費用を見積もる: 物件の状態をしっかり確認し、必要なリノベーション工事の内容とその費用を現実的に見積もります。可能であれば、物件購入前にリフォーム会社などに相談し、概算費用を出してもらうと良いでしょう。
- 予備費を設ける: 古い物件の場合、解体してから初めてわかる不具合などがあり、追加工事が必要になるケースがあります。想定外の事態に備え、リノベーション費用の1割~2割程度の予備費を見ておくと安心です。
- 補助金を組み込む: どの補助金が利用できそうか目星をつけ、それぞれの補助額や条件を確認します。補助金は後から交付されるケースが多いので、その間の資金繰りも考慮に入れます。
- 資金調達方法を検討する: 自己資金で全て賄うのか、住宅ローンやリフォームローンを利用するのかなど、資金調達方法を検討します。地方銀行や信用金庫、JAなどでは、空き家購入やリフォームに特化したローン商品を用意している場合もあります。
- ライフプランと照らし合わせる: 今後の収入や支出の見込み、教育資金、老後資金など、ライフプラン全体を踏まえて、無理のない返済計画や資金計画を立てましょう。
シミュレーション例(あくまで目安です)
物件価格:500万円 取得諸費用:40万円(物件価格の8%と想定) リノベーション費用:700万円(骨組みを残して全体を改修する場合の目安) その他の諸費用:100万円(引越し、家具家電など) 予備費:70万円(リノベ費用の10%と想定)
合計費用:500 + 40 + 700 + 100 + 70 = 1,410万円
利用可能な補助金: 自治体の空き家改修補助金:100万円 国の省エネ関連補助金:50万円
補助金合計:100 + 50 = 150万円
自己資金等で賄う金額:1,410万円 - 150万円 = 1,260万円
この金額を自己資金とローンで賄う計画を立てることになります。この例はあくまで一般的な目安であり、物件や地域、リノベーションの内容によって費用は大きく変動しますことをご承知おきください。
結論・まとめ
空き家バンクを利用した移住における費用、特にリノベーション費用に対する不安は、多くの方が抱える課題です。しかし、費用全体像を正確に把握し、リノベーション費用を賢く抑えるための具体的な方法を実践し、さらに利用できる補助金制度を最大限に活用することで、費用負担を軽減し、移住を実現することは十分に可能です。
この記事でご紹介した費用削減のポイントや補助金制度の情報が、皆様の計画を立てる上での一助となれば幸いです。費用に関する不安を解消し、計画的に準備を進めることが、空き家バンク物件での新しい暮らしを成功させる鍵となるでしょう。
補助金制度については常に最新の情報を確認し、必要に応じて専門家や自治体の窓口にも相談しながら、着実にステップを進めていかれることを応援しています。