空き家バンクで『これだ!』を見つけたらまずいくら?契約前の確認費用、初期費用、リノベ準備費用と補助金
空き家バンク、気になる物件発見!次に知るべき費用と補助金
都市部での生活から離れ、地方での新たな暮らしを夢見る30代の皆様にとって、空き家バンクは魅力的な選択肢の一つではないでしょうか。しかし、「空き家バンクで物件を見つけた後、具体的にどれくらいの費用がかかるのか」「どんなタイミングでお金が必要になるのか」「補助金は使えるのか」といった費用に関する不安は、大きな壁となり得ます。
この記事では、空き家バンクで「これだ!」と思える物件を見つけてから、実際にリノベーションを始めるまでの期間に焦点を当て、具体的に発生する可能性のある費用項目とその目安、そしてそれらを軽減するための補助金制度について分かりやすく解説します。物件探しが進んだ段階での具体的な費用を見通し、資金計画を立てる上での一助となれば幸いです。
物件を見つけたら、まず検討したい「契約前の確認費用」
空き家バンクで気に入った物件が見つかっても、すぐに契約とはなりません。特に古い物件の場合、建物の状態や土地の状況をしっかりと把握しておくことが非常に重要です。これらの確認のためにかかる費用は、安心して購入・リノベーションを進める上で必要な「投資」と考えられます。
- 建物状況調査(ホームインスペクション)費用 建物の基礎、壁、屋根、雨漏り、シロアリ被害などを専門家が診断する費用です。目視や簡易な検査だけでなく、オプションで床下や小屋裏の詳細な検査を依頼することも可能です。これにより、購入後に発覚する予期せぬ大規模修繕リスクを減らすことができます。費用は建物の規模にもよりますが、一般的に5万円から10万円程度が目安となります。
- 地盤調査費用 軟弱地盤の可能性や、過去の履歴が不明な土地の場合に検討したい調査です。建物を安全に建てる(または大規模な改修をする)上で、地盤の強さを確認します。費用は調査方法や規模によって異なりますが、一般的に10万円から30万円程度を見込んでおくと良いでしょう。
- 測量費用 土地の境界線が不明確な場合や、正確な面積を知りたい場合に必要となることがあります。隣地所有者との境界確認なども含まれる場合があり、費用は土地の形状や隣地の状況によって変動しますが、一般的に30万円から50万円程度かかることがあります。
これらの費用は必須ではありませんが、特に築年数の古い物件や、地盤、境界に不安がある場合は、安心して取引を進めるために検討価値のある費用と言えます。
購入決定!「契約・決済・登記の初期費用」
購入の意思が固まり、売主との合意に至った後、契約から引き渡し(決済)を経て名義変更(登記)を行う段階で発生する費用です。これらは物件価格とは別に必要となる、比較的まとまった金額です。
- 仲介手数料 不動産会社を介して売買する場合にかかる手数料です。宅地建物取引業法によって上限額が定められており、物件価格が400万円を超える場合は「(物件価格 × 3% + 6万円)+ 消費税」が速算式として用いられます。例えば、物件価格が500万円の場合、仲介手数料の上限は約23万円+消費税となります。
- 売買契約書の印紙税 不動産の売買契約書に貼付する印紙にかかる税金です。契約金額によって税額が決まっており、例えば1,000万円超5,000万円以下の契約書には1万円(軽減措置適用後の額、令和6年3月31日まで)の印紙が必要です。
- 固定資産税・都市計画税の清算金 引き渡し日を基準に、その年度の税金を売主と買主で日割り清算します。一般的には引き渡し以降の期間分を買主が売主に支払います。金額は物件の固定資産税評価額によって異なります。
- 登記費用(登録免許税・司法書士への報酬) 所有権移転登記などにかかる税金(登録免許税)と、登記手続きを代行する司法書士への報酬です。登録免許税は固定資産税評価額を基に計算され、司法書士報酬は依頼する事務所によって異なります。物件価格や借入額にもよりますが、一般的に10万円から30万円程度を見込んでおくと良いでしょう。
- 火災保険料 住宅ローンを利用する場合、火災保険への加入が必須となることがほとんどです。地震保険をセットにするか、保険期間を何年にするかなどで保険料は大きく変動しますが、長期一括で支払うと数十万円になることもあります。
- 融資手数料・保証料(ローン利用の場合) 住宅ローンを借りる際に、金融機関に支払う手数料や保証会社に支払う保証料です。借入額や金融機関によって異なりますが、数十万円から借入額の2%程度になることもあります。
これらの初期費用は、物件価格に加えて必要となるため、自己資金で賄うのか、それともローンに組み込むのかを事前に検討しておくことが大切です。
リノベーションを始める前に必要な「リノベ準備費用」
物件の取得が完了したら、いよいよリノベーションの準備です。本格的な工事に入る前にも、設計や業者選定などにかかる費用が発生する場合があります。
- プランニング・設計費用 リノベーション会社にプランニングや設計を依頼する場合にかかる費用です。工事費用の数パーセント、または定額の場合があります。理想の住まいを実現するための重要なステップであり、プロの視点からのアドバイスや詳細な設計図を得られます。
- 現況測量・詳細調査費用 建物の正確な寸法を測ったり、構造材や配管、断熱材の状況などをより詳細に調査したりする場合に発生する費用です。リノベーションの設計精度を高め、工事中の予期せぬ事態を防ぐために行われます。
- 見積もり費用 複数のリノベーション会社から見積もりを取る際に、現地調査費などが発生する場合があります(多くは無料ですが、複雑な物件などでは費用が発生することも)。
大規模なリノベーションを計画する場合、これらの準備段階の費用も数万円から数十万円程度かかる可能性があります。
その他、移住に伴う諸費用
物件の取得やリノベーション工事費用以外にも、移住に伴って様々な費用が発生します。これらも資金計画に含めておく必要があります。
- 引越し費用 荷物の量や移動距離、時期によって大きく変動します。
- 仮住まい費用 リノベーション工事期間中に別の場所に住む場合にかかります。家賃、敷金、礼金、仲介手数料、二重の引越し費用などが発生します。
- ライフライン関連費用 水道、電気、ガスの契約、インターネット回線の引き込み工事など。物件によっては、配管や配線の修繕・交換が必要になる場合もあります。
- 家具・家電購入費用 新しい生活に必要な家具や家電を買い揃える費用です。
- 外構費用 庭木の剪定や伐採、塀の修繕、駐車スペースの整備など、建物の外回りにかかる費用です。
- その他 ご近所への挨拶品代、地域の行事への参加費、車の購入・維持費(地方では必須の場合が多い)など、移住後の生活に関わる初期費用も考慮しておきましょう。
これらの費用は、それぞれの状況によって大きく異なりますが、数十万円から数百万円かかる可能性もあります。
費用を軽減!活用できる可能性のある補助金制度
空き家バンク物件の取得やリノベーション、そして移住に対して、国や自治体は様々な支援制度を用意しています。これらの補助金を活用することで、費用負担を大きく軽減できる可能性があります。
- 国の補助金制度
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業: 既存住宅の性能向上リフォーム(耐震化、省エネ化など)や三世代同居対応改修などに対して補助があります。インスペクションや履歴作成などの費用も補助対象に含まれる場合があります。
- 住宅省エネ2024キャンペーン(子育てエコホーム支援事業、先進的窓リノベ事業、給湯省エネ事業など): 開口部(窓・ドア)の断熱改修や高効率給湯器の設置など、省エネ性能を高めるリフォームに対して手厚い補助があります。リノベーションと合わせて活用できるケースが多く見られます。
- 既存住宅耐震改修工事費補助: 建築基準法の改正前に建てられた住宅の耐震改修工事に対する補助制度です。多くの場合、自治体を通じて申請します。耐震診断費用に対して補助が出る制度もあります。
- 自治体の補助金制度
多くの市区町村では、独自の空き家改修補助金や移住・定住促進補助金を用意しています。
- 空き家改修費補助金: 空き家バンク登録物件など、特定の条件を満たす空き家を改修する際に、工事費用の一部を補助する制度です。補助率は自治体によって様々ですが、費用の1/2や定額などが一般的です。
- 移住・定住促進補助金: 転入者に対して、住宅取得費用やリフォーム費用、引越し費用の一部を補助する制度です。年齢や世帯構成によって加算措置がある場合もあります。
- 特定工事(耐震、断熱、バリアフリーなど)に対する補助金: 国の制度に加えて、自治体独自の基準や上乗せ補助がある場合があります。
- 建物状況調査(インスペクション)や耐震診断に対する補助金: 契約前の確認段階で利用できる補助金を用意している自治体もあります。
補助金活用のポイント
- 情報収集: 国の制度は国土交通省や環境省などの公式サイト、自治体の制度は各自治体のウェブサイトや移住相談窓口で最新情報を確認してください。制度内容、募集期間、対象者、対象工事、補助額、必要書類などが異なります。
- 早めの検討: 多くの補助金は申請期間が決まっていたり、予算の上限に達すると終了したりします。物件探しの段階から、候補地の自治体の補助金制度を調べておくことをお勧めします。
- 条件確認: 対象となる物件の築年数や構造、申請者の居住状況、工事内容、業者の指定など、細かな条件が定められています。ご自身の計画が条件を満たすか、必ず事前に確認してください。
- 他の制度との併用: 国と自治体の補助金は併用できるケースも多くありますが、制限がある場合もあります。事前に確認が必要です。
補助金制度は常に変動する可能性があります。必ずご自身で最新の情報をご確認ください。
費用全体像の把握と資金計画の立て方
空き家バンク物件の取得・リノベーション・移住にかかる費用は、物件価格だけでなく、ご紹介した様々な費用が含まれます。これらの費用全体像を把握し、計画的に資金を準備することが、不安なく移住を実現するための鍵となります。
物件を見つけてから移住するまでの主な費用発生タイミングを整理すると、以下のようになります。
- 物件発見〜契約前: 建物状況調査費用、耐震診断費用など(必要な場合)
- 契約時〜決済・登記: 仲介手数料、印紙税、固定資産税等清算金、登記費用、火災保険料、融資関連費用(ローン利用の場合)
- 物件取得後〜リノベ工事開始前: プランニング・設計費用、詳細調査費用など(大規模リノベの場合)
- リノベーション工事中: 工事費用の支払い(着手金、中間金、最終金など)、仮住まい費用、二重家賃(住宅ローンと仮住まい家賃)
- 移住準備〜移住後初期: 引越し費用、ライフライン整備費用、家具・家電購入費用、外構費用、その他の初期生活費用
資金計画の立て方
- 自己資金の確認: 現在手元にある資金で、初期費用や頭金に充てられる額を確認します。
- 物件価格とリノベーション費用の目安設定: 予算総額から物件価格とリノベーションにかけられる概算費用を設定します。リノベーション費用は物件の状態によって大きく変動するため、複数の業者から概算見積もりを取るなどして現実的な目安を立てることが重要です。
- 各種諸費用の見積もり: これまでご紹介した、契約前の確認費用、初期費用、リノベ準備費用、その他費用をリストアップし、それぞれ概算の金額を見積もります。地域差や物件の状態、ご自身の状況によって大きく変動するため、余裕を持った金額で見積もることをお勧めします。
- 補助金の見込み額を確認: 利用できそうな補助金制度を調べ、条件を満たすか確認し、受け取れる可能性のある概算補助金額を計算します。これはあくまで見込み額として資金計画に組み込みます。
- 住宅ローン・リフォームローンの検討: 自己資金と補助金だけでは不足する場合、ローンでの資金調達を検討します。借入可能額、金利、返済期間などをシミュレーションし、月々の返済額が無理のない範囲か確認します。
資金シミュレーション例(あくまで目安)
- 物件価格:500万円
- 契約前の確認費用(インスペクションなど):10万円
- 初期費用(仲介手数料、登記費用、税金、保険など):50万円
- リノベーション費用(フルリノベ想定):1,000万円
- リノベ準備費用(設計費など):30万円
- その他諸費用(引越し、家具家電、ライフラインなど):100万円
-
費用総額(概算):1,690万円
-
利用可能な補助金(自治体リフォーム補助金、国の省エネ補助金など合計):200万円
- 自己資金とローンで必要な資金(概算):1,490万円
このように、項目ごとに費用を分解し、それぞれの概算額と利用できる補助金を見積もることで、総額を把握し、必要な資金計画を立てやすくなります。
まとめ:計画的な費用把握が移住成功の第一歩
空き家バンクを利用した移住は、魅力的な選択肢である一方で、費用に対する不安はつきものです。特に、物件を見つけた後、契約前に必要な確認費用、契約・決済・登記にかかる初期費用、そしてリノベーションの準備段階で発生する費用は、物件価格や工事費そのものとは別に把握しておくべき重要な項目です。
この記事でご紹介したように、物件発見後の具体的なステップで発生する費用項目とその目安を知り、利用できる可能性のある補助金制度を事前に調べることで、資金計画をより具体的に立てることができます。不安を解消し、計画的にステップを進めることが、空き家バンクでの理想の住まい探し、そして豊かな移住生活を実現するための大切な第一歩となります。
まずは気になる物件が見つかったら、この記事を参考に、どんな費用がかかりそうか、どんな補助金が利用できそうか、具体的な情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。不明な点は、空き家バンクの担当者や不動産会社、自治体の移住相談窓口に遠慮なく質問することをお勧めします。