空き家バンク検討を始める前に知るべきお金のこと:費用全体像と補助金活用の準備
空き家バンクで理想の移住を、費用と補助金の不安を解消するために
都市部から地方への移住を検討される際、空き家バンクの物件は魅力的な選択肢の一つとなります。しかし、「費用は一体いくらかかるのだろう」「リノベーションにはどれくらいのお金が必要なのだろう」「補助金は使えるのだろうか」といった、金銭面でのご不安を抱えている方も少なくないでしょう。特に、建築やリノベーションに関する専門知識があまりない場合、その不安は一層大きくなるかもしれません。
この記事では、空き家バンク物件の取得からリノベーション、そして新しい生活を始めるまでにかかる費用全体像と、それらを軽減するために活用できる可能性のある補助金制度について、分かりやすく解説いたします。具体的な検討を始める前に、まずお金の面でどのようなことを知っておけば良いのか、その準備にお役立ていただければ幸いです。
空き家取得にかかる費用について
空き家バンクで「これだ」と思える物件を見つけた場合、実際に取得するまでには物件価格以外にも様々な費用が発生します。これらの費用は、物件価格の数%から十数%程度になることが一般的ですので、事前に把握しておくことが重要です。
主な取得費用としては、以下のようなものが挙げられます。
- 仲介手数料: 不動産業者を介して売買を行う場合に発生します。宅地建物取引業法によって上限額が定められており、物件価格によって異なりますが、一般的に物件価格の「3% + 6万円 + 消費税」が上限となることが多いです。
- 登記費用: 所有権移転登記や抵当権設定登記(ローンを利用する場合)にかかる費用です。登録免許税(国に納める税金)と、司法書士に依頼する場合の報酬が含まれます。
- 不動産取得税: 不動産を取得した際に一度だけかかる都道府県税です。軽減措置が適用される場合もありますが、物件価格や評価額に基づいて算出されます。
- 固定資産税・都市計画税の精算: 不動産を引き渡す日を境に、その年度の固定資産税・都市計画税を売主と買主で日割り精算するのが一般的です。
- 印紙税: 不動産売買契約書に貼付する印紙代です。契約金額によって税額が異なります。
これらの費用は、物件価格に加えて現金で準備する必要がある場合が多いため、資金計画の初期段階で考慮に入れておくことが大切です。
リノベーションにかかる費用について
空き家バンクの物件は、そのまま住める状態ではないことが多く、多くの場合リノベーション(改修工事)が必要になります。リノベーションにかかる費用は、その内容や範囲によって大きく変動します。
- 部分的な改修: キッチンやお風呂などの水回りだけを新しくする、壁紙を張り替えるといった部分的な改修であれば、費用は比較的抑えられます。内容にもよりますが、数十万円から数百万円程度が目安となります。
- 骨組みだけを残して全体を改修(フルリノベーション): 間取り変更や断熱工事、耐震補強など、建物の構造に関わる部分まで含めて大規模な改修を行う場合、費用は高額になります。建物の規模や状態、こだわる素材などによって大きく変わりますが、数百万円から1千万円以上かかることもあります。
費用を抑えるポイントとしては、建物の状態を正確に把握するためのインスペクション(建物状況調査)を行うこと、改修の優先順位をつけること、複数の施工業者から相見積もりを取ることなどが有効です。全ての改修を一度に行うのではなく、必要最低限の工事から始め、段階的にリノベーションを進めるという方法もあります。
その他の諸費用について
取得費用やリノベーション費用以外にも、移住にあたってはいくつかの費用が発生します。
- 引越し費用: 現在お住まいの場所から新しい住居までの引越しにかかる費用です。荷物の量や移動距離によって異なります。
- 家具・家電購入費: 新居に合わせて家具や家電を買い替える場合にかかる費用です。
- 保険料: 火災保険や地震保険など、住居に関する保険料がかかります。
- ライフラインの引き込み・整備費用: 電気、ガス、水道、インターネットなどのライフラインが整備されていない場合、引き込みや初期工事に費用がかかることがあります。
- 不動産取得後の税金: 毎年かかる固定資産税や都市計画税が発生します。
これらの費用も、移住計画全体の予算に含めておくことが必要です。
利用できる可能性のある補助金制度
空き家バンク物件の取得やリノベーション、移住に対して、国や地方自治体が様々な補助金制度を用意している場合があります。これらの補助金を活用することで、費用負担を大きく軽減できる可能性があります。
補助金制度には、以下のような種類があります。
- 空き家改修等補助金: 老朽化した空き家を安全に住めるようにするための改修工事費用の一部を補助する制度です。耐震改修、断熱改修、水回り改修などが対象となることが多いです。
- 移住・定住促進補助金: 地方への移住を促進するため、引っ越し費用や家賃補助、住宅取得費用の一部を補助する制度です。
- 多子世帯・若年夫婦世帯向け補助金: 特定の世帯を対象に、住宅取得やリフォーム費用を補助する制度です。
- 特定テーマ型補助金: 省エネ改修、バリアフリー改修、自然エネルギー設備導入など、特定の目的の工事に対する補助金です。
補助金活用のための準備とポイント
- 情報収集: 国の補助金(例: 既存住宅省エネリフォームに関する補助金など)や、移住を検討している自治体の空き家バンク関連部署や移住相談窓口に問い合わせるなどして、どのような補助金があるのか最新情報を集めましょう。自治体独自の補助金が充実している場合があります。
- 対象となる条件の確認: 補助金にはそれぞれ、対象となる人(年齢、居住年数、所得など)、対象となる物件(築年数、構造など)、対象となる工事内容、申請期間など、細かな条件が定められています。「空き家を購入する」というだけではなく、「購入した空き家を改修する」ことや「移住すること」自体が補助の対象となる場合もあります。
- 申請時期と手続き: 補助金は申請期間が決まっている場合が多く、また、工事着工前に申請・決定が必要な制度がほとんどです。手続きには書類準備なども必要になるため、早めに情報を確認し、計画的に進めることが重要です。
補助金制度は頻繁に内容が変更されたり、予算額に達すると終了したりすることがあります。必ず、最新の情報を各制度の公式サイトや自治体の窓口でご確認ください。
費用全体像の把握と資金計画
ここまで見てきたように、空き家バンク物件を取得して移住するには、物件価格に加えて様々な費用がかかります。これらの費用全体像を把握し、資金計画を立てることが、不安なく移住を実現するための鍵となります。
資金計画のステップ
- 目標とする総費用の目安設定: 物件価格、取得にかかる諸費用、リノベーション費用、その他諸費用を含めた、無理のない総費用の目安を設定します。リノベーション費用は建物の状態によって大きく変わるため、可能であれば物件のインスペクションを行い、必要な改修工事の概算費用を把握することが望ましいです。
- 自己資金の確認: 貯蓄や親族からの援助などで用意できる自己資金を確認します。
- 補助金の活用検討: 利用できそうな補助金制度を調べ、対象となる条件や補助額を確認します。補助金は通常、後払いになるケースが多いため、一時的な立て替え資金が必要になることも考慮が必要です。
- ローン活用の検討: 自己資金や補助金で足りない部分をローンで賄うことを検討します。住宅ローン以外に、リフォームローンや、空き家購入・リノベーション一体型ローンなど、様々な種類があります。金融機関に相談し、借入可能額や返済計画をシミュレーションしてみましょう。
- 予備費の設定: 想定外の追加工事や費用が発生する可能性も考慮し、総費用の1割〜2割程度の予備費を確保しておくことをお勧めします。
費用シミュレーション例(あくまで目安です)
例えば、物件価格300万円の空き家を取得し、全体的なリノベーションに700万円かける場合を想定します。
- 物件価格: 300万円
- 取得にかかる諸費用(仲介手数料、登記、税金など): 70万円程度(物件価格の20%程度と仮定)
- リノベーション費用: 700万円
- その他諸費用(引越し、家具家電、保険など): 100万円程度
- 総費用目安: 1170万円
ここに、例えば自治体の空き家改修補助金で上限100万円、移住促進補助金で50万円が利用できたとします。
- 利用可能な補助金合計: 150万円
自己資金で300万円を用意できる場合、不足する資金は1170万円 - 150万円(補助金) - 300万円(自己資金) = 720万円となります。この720万円をローンで賄う、といった具体的な資金計画が見えてきます。(※補助金は後払いの場合がある点にご留意ください。)
このシミュレーションはあくまで一例です。物件の状態、必要なリノベーション内容、利用できる補助金、個人の資金状況によって費用は大きく変動します。
まとめ:計画的な準備が安心な移住への道を開く
空き家バンクを利用した移住は、費用面での不透明さから一歩踏み出せないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、取得にかかる費用、リノベーション費用、その他の諸費用といったお金の流れ全体を早い段階で把握し、さらに活用できる可能性のある補助金制度について情報収集を行うことで、漠然とした不安を具体的に解消し、計画的に進めることが可能になります。
まずは、この記事で解説したような費用項目があることを知り、移住を検討している地域の空き家バンク情報や自治体の補助金制度について調べてみましょう。そして、自己資金でどこまで賄えるか、どのような補助金が利用できそうか、不足分はどのように補うかといった資金計画の「準備」を進めることが、安心な空き家取得・リノベーション、そして理想の移住生活を実現するための第一歩となります。
分からないことは、自治体の窓口や移住相談員、専門家(不動産業者、建築業者、ファイナンシャルプランナーなど)に遠慮なく相談してみることをお勧めいたします。あなたの移住計画がスムーズに進むよう、心から応援しております。