空き家バンク物件決定後、最初にかかる費用と補助金 〜契約・登記・決済のステップ解説〜
空き家バンク物件購入決定後の費用不安を解消する
都市部から地方への移住を検討されている皆様にとって、空き家バンクの物件は魅力的な選択肢の一つでしょう。しかし、物件価格が比較的安価であったとしても、「実際に購入を決定してから、どれくらいの費用がかかるのだろうか」「リノベーション費用は?」「何か補助金は使えるのだろうか」といった金銭的な不安はつきものです。
この記事では、特に空き家バンク物件の購入を決定した後、実際に物件の引き渡しを受けるまでの間に発生する具体的な費用に焦点を当て、それらを軽減するために利用できる可能性のある補助金についても解説します。事前にこれらの費用を把握しておくことで、より計画的に、そして安心して移住へのステップを進めることができるでしょう。
空き家取得にかかる費用(物件決定後から引き渡しまで)
空き家バンクに登録されている物件の購入費用は、立地や状態によって様々ですが、物件そのものの価格以外にも、引き渡しまでに様々な費用が発生します。ここでは、主な費用について解説します。
1. 仲介手数料
空き家バンクを通じて不動産業者が仲介に入っている物件を購入する場合にかかります。宅地建物取引業法によって上限が定められており、一般的には売買価格に応じて以下のような速算式が用いられます。
- 売買価格200万円以下の部分:5% + 消費税
- 売買価格200万円超400万円以下の部分:4% + 消費税
- 売買価格400万円超の部分:3% + 消費税
例えば、売買価格1,000万円の物件の場合、仲介手数料の上限は「(1,000万円 × 3% + 6万円) + 消費税」となります。この手数料は、契約締結時と引き渡し時の2回に分けて支払うことが一般的です。
2. 登記費用
所有権を移転する際に発生する費用です。これには主に以下のものが含まれます。
- 登録免許税: 登記を行う際に国に納める税金です。売買による所有権移転登記の場合、固定資産税評価額に一定の税率をかけて算出されます。通常は土地・建物それぞれにかかります。
- 司法書士への報酬: 登記手続きは複雑なため、専門家である司法書士に依頼することが一般的です。司法書士への報酬は、依頼する内容や司法書士事務所によって異なりますが、数万円から10万円程度が目安となります。
3. 印紙税
不動産売買契約書を作成する際に発生する税金です。契約書に貼付する印紙の形で納めます。税額は契約金額によって異なり、例えば契約金額が1,000万円超5,000万円以下の場合は2万円(軽減措置適用後の金額)となります。
4. 固定資産税・都市計画税の精算金
固定資産税や都市計画税は、その年の1月1日時点の所有者に対して課税されます。しかし、年の途中で所有権が移転する場合、引き渡し日を境に買主と売主で日割り計算して精算することが一般的です。通常は買主が売主に対して、引き渡し日以降の税額を負担する形で支払います。
5. その他
- 物件調査費用: 必要に応じて、建物の状態や敷地の境界などを専門家に調査依頼する場合にかかる費用です。
- ローン関連費用: 住宅ローンを利用する場合、金融機関への手数料や保証料、団体信用生命保険料などが別途かかります。
これらの費用は、物件価格とは別に現金で用意する必要がある場合が多いため、事前に概算を把握しておくことが重要です。
リノベーションにかかる費用
空き家バンクの物件は築年数が経過していることが多く、多くの場合、快適に暮らすためにはリノベーションが必要となります。リノベーション費用は、その範囲や内容によって大きく変動します。
- 部分的な改修: 水回り(キッチン、浴室、トイレ)のみ、間取り変更なしでの内装改修など、特定の箇所に絞った改修であれば、数百万円程度から可能です。
- フルリノベーション: 間取りを大きく変更したり、構造部分に手を加えたり、断熱改修などを行う場合は、1,000万円を超えることも少なくありません。
費用を抑えるポイントとしては、建物の状態を正確に把握し、必要な箇所に優先順位をつけて計画すること、また、DIYを取り入れることも検討できます。ただし、耐震性や断熱性に関わる重要な改修は、専門家への依頼を推奨します。
その他の諸費用
空き家を取得し、リノベーションして移住するまでには、上記以外にも様々な費用が発生する可能性があります。
- 引越し費用: 現在お住まいの場所から新しい住まいへの引越しにかかる費用です。距離や荷物の量によって変動します。
- 家具・家電購入費用: 新居に合わせて家具や家電を買い替える場合にかかります。
- 保険料: 火災保険や地震保険への加入が必要です。
- 近隣挨拶品代: 移住先での新しい生活を円滑に進めるための費用です。
これらの費用も、全体の資金計画に含めておくことが大切です。
利用できる可能性のある補助金制度
空き家バンク物件の取得やリノベーション、移住に対して、国や自治体(市町村、都道府県)が様々な補助金制度を設けています。特にリノベーションや改修に対する補助金が多く見られます。
国の主な補助金制度(例)
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業: 既存住宅の性能向上リフォーム(耐震化、省エネ化など)に対して補助が出ます。長期優良住宅の認定を受けるなどの要件があります。
- こどもエコすまい支援事業(※制度の実施状況や名称は年度によって変動します): 省エネ改修などに特化した補助金です。子育て世帯や若者夫婦世帯が対象となることが多いですが、全ての世帯が対象となる省エネ改修も含まれる場合があります。最新の情報は必ず経済産業省や国土交通省のウェブサイトでご確認ください。
- 地域型住宅グリーン化事業: 地域の中小工務店等が連携して取り組む省エネ性能や耐久性等に優れた木造住宅の整備に対し補助が出ます。リフォームにも活用できる場合があります。
自治体の主な補助金制度(例)
自治体(特に移住促進に力を入れている市町村)では、独自の補助金制度を設けている場合が多く、これが空き家バンク物件取得・リノベーションの大きな助けとなります。
- 空き家改修補助金: 空き家バンク登録物件などの改修費用の一部を補助する制度です。改修内容(耐震、断熱、水回りなど)や補助率、上限額は自治体によって大きく異なります。
- 移住促進補助金: 市町村への移住者に対して、住宅取得費用や家賃、引越し費用の一部を補助する制度です。空き家バンク物件の購入者を対象としている場合も多くあります。
- 住宅診断・耐震診断補助: リノベーションを行う前に必要な建物の診断費用に対して補助が出る場合があります。
- 家財道具処分補助: 残された家財道具の処分費用を補助する制度がある自治体もあります。
補助金制度活用のポイント
- 最新情報の確認: 補助金制度は、国の制度も自治体の制度も頻繁に内容が変更されたり、受付期間が限られていたりします。必ず各制度の公式サイトや、移住を検討している自治体の公式サイトで最新情報を確認してください。
- 対象となる工事・条件の確認: 補助金ごとに、対象となる工事内容、建物の要件(築年数、構造など)、申請者の要件(年齢、所得、居住状況など)が細かく定められています。「空き家バンク登録物件であること」が要件に含まれる制度もあります。
- 申請時期と手続き: 多くの補助金は、工事の契約・着工前に申請が必要です。また、必要書類が多く、手続きに時間がかかる場合もあります。事前にしっかりと準備を進めることが重要です。
- 他の制度との併用: 複数の補助金制度を併用できる場合とできない場合があります。事前に確認しておきましょう。
費用全体像の把握と資金計画
ここまで見てきたように、空き家バンク物件の取得から移住、リノベーションまでには様々な費用がかかります。物件価格だけでなく、これらの諸費用、そして利用可能な補助金を全て考慮に入れた上で、費用全体像を把握し、資金計画を立てることが非常に重要です。
費用全体像の考え方
総費用 = (物件価格 + 取得にかかる諸費用 + リノベーション費用 + その他の諸費用) - 補助金等
となります。この「取得にかかる諸費用」には、特に物件決定後から引き渡しまでに発生する仲介手数料、登記費用、税金などが含まれます。
資金計画のポイント
- 費用のリストアップと概算: 想定される全ての費用項目をリストアップし、それぞれについて可能な限り正確な概算を立てます。不動産業者やリノベーション業者から見積もりを取ることが重要です。
- 自己資金の確認: 用意できる自己資金(貯蓄)を確認します。取得にかかる諸費用や、リノベーション費用の一部など、ローンでは賄えない費用があることを想定しておく必要があります。
- 住宅ローンの検討: 物件価格やリノベーション費用に対して、住宅ローンを利用するか検討します。空き家バンク物件やリノベーションに対するローン商品もありますが、金融機関によって条件が異なりますので、複数に相談することをお勧めします。
- 補助金制度の調査と活用: 検討している自治体の補助金制度を徹底的に調べ、利用できそうな制度があれば、申請条件やスケジュールを確認し、資金計画に組み込みます。補助金は後から交付される場合が多いため、一時的に自己資金やローンで賄う必要があることを理解しておきましょう。
- 予備費の確保: 想定外の費用が発生する可能性もゼロではありません。特に築古物件の場合、建物を開けてみたら追加の補修が必要になった、といったこともあり得ます。総費用の1割〜2割程度の予備費を見込んでおくと安心です。
費用シミュレーション例(あくまで目安)
- 物件価格: 500万円
- 取得にかかる諸費用(仲介手数料、登記費用、税金等): 80万円
- リノベーション費用(部分改修): 700万円
- その他の諸費用(引越し、家具家電など): 100万円
- 想定される総費用(補助金適用前): 500 + 80 + 700 + 100 = 1,380万円
- 利用可能な補助金(自治体改修補助、国の省エネ補助等): -250万円
- 補助金適用後の費用: 1,130万円
この例では、物件価格の2倍以上の費用がかかる可能性があります。このように、物件価格だけで判断せず、諸費用やリノベーション費用、そして補助金を総合的に考慮した資金計画が不可欠です。
まとめ
空き家バンク物件の取得からリノベーション、移住までにかかる費用は、物件価格だけでなく、仲介手数料、登記費用、税金、リノベーション費用、その他の諸費用など多岐にわたります。特に、物件購入決定後に発生する契約や登記、決済に関する費用は、事前に把握しておくことで手続きをスムーズに進めることができます。
費用に対する不安は、計画的に情報を収集し、全体像を把握することで大きく軽減できます。国や自治体の補助金制度も積極的に活用することで、金銭的な負担を減らし、理想の暮らしを実現するための大きな力となります。
移住への道のりは、一つ一つのステップを丁寧に確認しながら進めることが大切です。この記事で解説した費用や補助金に関する情報が、皆様の空き家バンクを活用した移住計画の一助となれば幸いです。最新の費用情報や補助金制度については、必ず関係機関や公式サイトでご確認ください。