空き家バンクで賢くリノベーション。主要工事の費用目安と使える補助金ガイド
空き家バンク物件のリノベーション、費用と補助金を知って安心計画
都市部から地方への移住を検討されている30代の皆様にとって、空き家バンクを活用した住まい探しは魅力的な選択肢の一つではないでしょうか。しかし、物件価格自体が抑えられていても、「実際に住めるようにするには、どのくらい費用がかかるのだろう」「リノベーションにはどんな工事があって、費用はどのくらい?」「使える補助金はあるのだろうか」といった費用に関する不安は大きいかもしれません。
この記事では、空き家バンク物件のリノベーションに焦点を当て、特に読者の皆様が気になるであろう主要な工事内容ごとの費用目安や、費用を抑えるポイント、そして活用できる可能性のある補助金制度について、分かりやすく解説いたします。この記事を通して、リノベーションにかかる費用への理解を深め、賢く計画を進めるための一助となれば幸いです。
リノベーション費用の基本的な考え方
リノベーション費用は、物件の状態、築年数、そしてどのような工事を行うかによって大きく変動します。一般的に、費用を考える上での目安として「坪単価」が使われることもありますが、空き家バンク物件のように状態が様々な場合は、坪単価だけでは判断が難しいことがほとんどです。
より現実的な費用の把握のためには、具体的な「工事内容」と、その工事を行う「範囲」を明確にすることが重要です。一口にリノベーションと言っても、古くなった設備を交換する部分的な改修から、骨組みだけを残して全てを一新するスケルトンリフォームまで、その内容は多岐にわたります。費用も、部分的な改修であれば数十万円から可能な場合もあれば、フルリノベーションになると1,000万円を超えることも珍しくありません。
以下では、空き家バンク物件で比較的必要とされることが多い主要なリノベーション工事について、費用目安と費用を抑えるポイントを見ていきましょう。
主要なリノベーション工事と費用目安・費用を抑えるポイント
水回り(キッチン、浴室、トイレ)
水回りは生活に不可欠な部分であり、築年数の古い空き家では改修が必要になるケースが多いです。設備そのものの寿命や、配管の劣化などが主な理由です。
- キッチン: システムキッチンのグレードや仕様によって大きく費用が変わりますが、一般的なリフォームであれば50万円~150万円程度が目安となります。費用を抑えるには、既存の設備位置を大きく変えない、高機能なものよりシンプルな製品を選ぶ、などの方法があります。
- 浴室: ユニットバスへの交換が主流です。こちらもグレードにより幅がありますが、一般的なユニットバスへの交換で50万円~150万円程度が見込まれます。在来工法の浴室をユニットバスにする場合は、解体や土間打ちなどの工程が増えるため、費用が高くなる傾向があります。
- トイレ: 便器の交換のみであれば10万円~30万円程度で可能な場合が多いです。手洗い場を別に設置したり、内装(壁・床)も同時に行う場合は30万円~50万円程度を見ておくと良いでしょう。
費用を抑えるポイント: * 既存の配管位置や間取りを大きく変更しない。 * 設備のグレードは必要十分なものを選ぶ。 * 複数の水回り工事をまとめて依頼すると、割引になる場合がある。
断熱改修
快適な暮らしのためには、断熱性の向上が重要です。特に古い空き家は断熱材が入っていない、あるいは不十分な場合が多く、夏は暑く冬は寒いという状態になりがちです。断熱改修は光熱費の削減にもつながります。
- 窓の断熱: 二重窓やペアガラスへの交換、内窓の設置などがあります。一箇所あたり5万円~20万円程度が目安です。家全体の窓を改修すると数十万円~数百万円になります。費用対効果が高く、比較的手軽に行える断熱改修です。
- 壁・床・天井の断熱: 壁を剥がして断熱材を入れる、あるいは外壁側から断熱材を施工する方法などがあります。大掛かりな工事になるため、家全体で行うと数百万円かかることもあります。他のリノベーション工事と合わせて行うと効率的です。
費用を抑えるポイント: * 費用対効果の高い窓の断熱から優先的に行う。 * 他の改修(外壁工事や内装工事など)と同時に行う。 * 後述する補助金制度を積極的に活用する(省エネ関連の補助金は充実しています)。
耐震改修
大規模な地震に備え、安全な住まいとするためには耐震性の確保が非常に重要です。特に旧耐震基準(1981年以前)で建てられた空き家では、耐震診断と必要に応じた補強工事が強く推奨されます。
- 耐震診断: 建物の構造や劣化状況を調査し、耐震性を評価します。費用は10万円~50万円程度が目安です。自治体によっては診断費用の一部または全部を補助する制度があります。
- 耐震補強工事: 診断結果に基づき、壁に筋交いや構造用合板を入れる、金物で接合部を補強する、基礎を補強するなど様々な方法があります。工事内容や規模によって大きく費用が変動しますが、一般的な木造住宅の部分的な補強で100万円~300万円程度、大規模な補強になるとそれ以上かかる場合もあります。
費用を抑えるポイント: * まず自治体の耐震診断補助制度を活用して診断を行う。 * 診断結果に基づき、費用対効果の高い補強方法を検討する。 * 耐震改修は、他のリノベーションと同時に行うことでコストを抑えられる場合があります。 * 後述する耐震改修に関する補助金制度を積極的に活用する。
間取り変更・スケルトンリフォーム
ライフスタイルに合わせて部屋数や広さを変えたり、全く新しい空間を創り出すための工事です。
- 間取り変更: 壁の撤去や移動などを行います。非構造壁の撤去であれば比較的容易ですが、構造に関わる壁を撤去・移動する場合は大掛かりな補強が必要となり、費用も高くなります。工事範囲によりますが、数十万円から数百万円以上と幅が広いです。
- スケルトンリフォーム: 構造躯体だけを残して内装や設備を全て解体し、ゼロから作り直すリフォームです。間取りを自由に設計できる反面、工事範囲が広いため費用も高額になります。坪単価30万円~50万円以上が目安となることが多く、建物規模によっては1,000万円を大きく超えることもあります。
費用を抑えるポイント: * 構造に関わる壁はできるだけ動かさない計画にする。 * 間取り変更に伴う水回りの移動は、配管工事が増えるため費用が高くなりやすい。 * 建物の状態や希望する間取り変更の内容を、事前に建築士やリフォーム会社に相談し、実現可能性と費用をよく確認する。
その他の諸費用
空き家を取得し、リノベーションして移住するまでには、リノベーション費用以外にも様々な費用が発生します。
- 引越し費用: 荷物の量や移動距離によって異なります。
- 家具・家電購入費: 新しい住まいに合わせて買い替えや追加が必要になる場合があります。
- 保険料: 火災保険や地震保険など。
- 税金: 不動産取得税、固定資産税など。
- 予備費: 想定外の工事(解体してみたら柱が腐っていた、など)が発生した場合に備え、リノベーション費用の10~20%程度の予備費を見ておくことをお勧めします。
これらの費用も資金計画に含める必要があります。
利用できる可能性のある補助金制度
空き家バンク物件の取得やリノベーションに対して、国や自治体は様々な補助金制度を設けています。これらの補助金を活用することで、費用負担を大きく軽減できる可能性があります。
国の主な補助金制度(例)
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業: 既存住宅の性能向上(耐震性、省エネ性など)を図るリフォーム工事に対して補助が行われます。一定の基準を満たすことで補助率や上限額が高くなるのが特徴です。
- こどもエコすまい支援事業(終了、後継事業に注意)/ 子育てエコホーム支援事業(2024年): 省エネ改修、子育て対応改修などに対して補助が行われます。対象期間や要件はその都度確認が必要です。特に子育て世帯や若者夫婦世帯向けに手厚い場合があります。
- 住宅省エネ2024キャンペーン(子育てエコホーム支援事業、先進的窓リノベ事業、給湯省エネ事業、賃貸集合給湯省エネ事業): 複数の省エネ関連補助金が連携して実施されるキャンペーンです。窓の断熱改修、高効率給湯器の設置などが補助対象となる代表例です。
- 耐震改修に関する補助制度: 各地方公共団体を通じて実施されることが多く、耐震診断や耐震補強工事に対して補助が行われます。
自治体の主な補助金制度(例)
自治体(都道府県や市区町村)は、国の補助金とは別に独自の補助金制度を設けている場合が多いです。
- 空き家改修補助金: 空き家バンクに登録された物件や、移住者が取得した空き家の改修に対して補助を行う制度です。補助対象となる工事や補助率は自治体によって大きく異なります。
- 移住・定住促進補助金: 移住に伴う住宅取得や改修に対して補助を行う制度です。
- 特定の工事に対する補助金: 耐震改修、省エネ改修、バリアフリー改修など、特定の性能向上工事に対して補助を行う制度です。
補助金制度活用のポイント:
- 最新情報の確認: 補助金制度は年度によって内容が変わったり、募集期間が決まっていたりします。必ず各制度の公式サイトや自治体のホームページで最新情報を確認してください。
- 対象者・対象工事・条件の確認: 補助金には、対象となる人の条件(年齢、移住者であることなど)、対象となる工事の種類、建物の築年数や構造などの条件があります。ご自身の状況や検討している工事が対象になるかを確認することが重要です。
- 申請時期と手続き: 補助金は工事着工前に申請が必要な場合がほとんどです。また、申請には様々な書類が必要になります。計画的に準備を進める必要があります。
- 複数の補助金の併用: 国と自治体の補助金は併用可能な場合がありますが、併用できない場合もあります。各制度の要件を確認してください。
- 専門家への相談: リフォーム会社や建築士は補助金制度に詳しい場合があります。相談してみるのも良いでしょう。
費用全体像の把握と資金計画
空き家取得、リノベーション、そして移住までの費用全体像を把握し、資金計画を立てることは、不安を解消し、計画を現実的に進める上で非常に重要です。
費用全体像を考えるステップ:
- 物件取得費用: 物件価格 + 仲介手数料 + 登記費用 + 税金などを計算します。
- リノベーション費用: 検討している工事内容(水回り、断熱、耐震など)ごとに費用目安を積み上げ、全体の概算を把握します。この際、予備費(10~20%)を含めることを忘れないでください。
- その他の諸費用: 引越し費用、家具家電費、保険料、税金などを考慮します。
- 利用可能な補助金: 検討している工事やご自身の状況で活用できる可能性のある補助金制度を確認し、受け取れる可能性のある金額を概算します。
資金計画のポイント:
- 自己資金の確認: 貯蓄など、ご自身で用意できる資金を確認します。
- ローン利用の検討: 不動産購入やリフォームのためのローン利用を検討します。住宅ローンやリフォームローン、フラット35などがあります。空き家バンク物件や大規模リノベーションの場合、融資条件が通常と異なる場合もあるため、事前に金融機関に相談することをお勧めします。
- 補助金の組み込み: 受け取れる可能性のある補助金は、資金計画に組み込んで考えます。ただし、補助金は後払いの場合が多いため、一時的な立て替え資金が必要になる点に注意が必要です。
- 具体的な金額シミュレーション例(目安):
- 物件価格: 300万円
- 取得にかかる諸費用: 50万円
- リノベーション費用(水回り、断熱、耐震一部など): 800万円(予備費含む)
- その他の諸費用(引越し、家具など): 100万円
- 費用合計: 1,250万円
- 利用できる補助金(例えば、自治体空き家改修補助50万円、国の省エネ補助60万円): -110万円
- 最終的な自己負担目安: 1,140万円
上記はあくまで一例であり、物件や工事内容、地域によって大きく変動します。複数のリフォーム会社から見積もりを取るなどして、より正確な費用を把握するよう努めてください。
まとめ
空き家バンク物件の取得とリノベーションには様々な費用がかかりますが、その全体像を理解し、計画的に進めることで、費用に関する不安は解消できます。特に、リノベーション費用は工事内容によって大きく異なり、水回り、断熱、耐震といった主要な工事ごとに費用目安や費用を抑えるポイントを知っておくことが重要です。
また、国や自治体は様々な補助金制度を設けており、これらを活用することで費用負担を軽減できる可能性があります。ご自身の検討している工事や状況に合った補助金がないか、最新情報を積極的に調べてみてください。
費用全体像を把握し、自己資金とローン、補助金を組み合わせた資金計画をしっかり立てることで、安心して空き家バンクでの住まい探しと理想のリノベーションを実現できるでしょう。ぜひ、この情報が、あなたの移住計画の一歩を踏み出す後押しとなれば幸いです。